アルハラに悩んだら

新入社員歓迎会や忘年会などお酒を飲む機会の多くなるシーズンになるとよく耳にするものにアルハラがあります。お酒を飲むことが出来ない人や、飲みたくないと思っている人に上司や先輩などが立場や強い言葉を盾にして無理やり飲ませることをアルコールハラスメント、略してアルハラといいます。アルハラは、精神的な苦痛を与えるというだけではなく、急性アルコール中毒になり死に至るなど、非常に大きな危険を孕んでいます。アルハラのよくある事例や、起こってしまった時にどう対処すべきなのか、アルハラに悩んだときどうしたら良いのかについてお話していきます。

アルハラとは何か よくある、アルハラのシチュエーション もしアルハラを強要されたら

アルハラとは何か


アルハラとは、飲酒を求めていない相手に対しての飲酒に関する言動や行動で、意図的かそうでないかに関わらず、それによって相手に何らかの不利益や不快感を与えて肉体的、精神的な損失を与えることを言います。本人の体質や意思を無視してお酒を飲むことを強要したり、お酒が飲めないということ自体を侮辱したり、暴言を吐いたり、暴力を振るうこともアルハラに当たります。

では、どのようなところでアルハラは起こりやすくなるのでしょうか?
アルハラは、上司と部下などの会社内や、先輩と後輩などの部活といった上下関係の中で、部署や部活などへの所属意識の生まれるところで、発生しやすい問題となっています。アルハラとして定義されるものとして、主に、直接お酒を飲むことを強要することと、酔った人による周囲への迷惑行動の2種類があります。

1.飲酒の強要
飲酒に関するものとしては、上下関係の中での宴席や組織の伝統、歓送迎会などの場で飲酒の強要をすることです。強い圧力をかけて本人が飲まなくてはいけない状況に追い込んだり、一気飲みや早飲みをさせたり、などがあります。もちろん飲酒の強要には、大量のお酒やアルコール度数の高いお酒を飲ませる、ノンアルコールと偽ってお酒を飲ませる、飲酒が禁止されている未成年にお酒を飲ませる、なども含まれます。

2.周囲への迷惑行動
これには、飲みの場で私物を取り上げる、ゲームへの強制参加、吐くまで飲むことを強要する酔いつぶし、酔った勢いでのセクハラ、酔って暴言・騒音・悪ふざけや衣服を脱ぐなど、他人への迷惑が挙げられます。また、お酒が飲めない人に対しても、お酒が飲めないことに対する侮辱や暴言、本人の体質を無視した飲み会への強制参加、飲めないことを理由とする仕事上での嫌がらせなど、お酒を飲めない人に対してのアルハラもしばしば起こっています。

アルハラは精神的な苦痛を与えることはもちろん、肉体的な負担も非常に大きいく、体質としてアルコールに拒否反応が出る人にお酒を飲ませたり、飲める人でも吐くほど大量に飲ませたり、急性アルコール中毒を引き起こすような飲ませ方をすることで、命すら脅かす危険なものであるという認識を持つ事が大切です。

よくある、アルハラのシチュエーション


よくアルハラが見られるシチュエーションとして、会社や部活、サークルなどでの飲みの席があげられます。これらの環境では、上下関係や所属意識、仲間意識が非常に強く生まれるので、お酒を断りにくいという特徴があります。そのため、参加したくないのに付き合いだといわれて参加させられたり、断ることが出来ない状況にさせられたり、勝手に参加することになっていたりと、強制的に参加せざるを得なくなることも数多くあります。

会社でよくあるケースを見ていきましょう。
会社では、上司や先輩などからの圧力によってアルハラが起こることが非常に多くあります。目上の人から強要された場合、もし断ったらどうなってしまうのか、気まずい関係にならないかなどの感情から断ることが出来ないという人も多くみられます。さらに飲酒の強要もあります。断っても、「まあまあ。」と言われ、お酒を注がれてしまうなんてことはよくある光景ではないでしょうか?ここから無理に飲ませるかどうか、がアルハラになるかどうかの境目です。仮に、強要するような言葉をかけなかったとしても、周りの雰囲気で飲まなければいけない
と感じてしまったり、注がれてしまったら飲まなければ失礼だと感じてしまったりする性格の方もいますので、注意が必要です。

アルハラで特に多いのが、サークルや部活などで集団で言い寄るというものです。数人で囲んでお酒を飲むことを強要したり、飲むことを強要するようなコールではやし立てたりすることで、盛り上がっている雰囲気を壊してはいけないという思いから、断ることが出来なくなってしまいます。他にも、通過儀礼や伝統として、「皆やってきたから」と多量の飲酒を強要される事も非常に多くあります。

このような飲み方は、肉体的な負担も非常に大きく、急性アルコール中毒などの原因になり最悪の場合死亡に至るケースもあり非常に危険です。飲酒を強要することはアルハラですが、アルハラに加えて酔った勢いでセクハラをしたり、暴言を吐いたり、暴力を振るったり、騒音を立てたりなどのパワハラをしたりと、酔って周囲の人に迷惑をかける行為は、犯罪にもなりうるハラスメントですので注意が必要です。

セクハラに悩んだら

パワハラに悩んだら


もしアルハラを強要されたら


 
勧められたお酒を断ることが出来るかどうかというのは、その方の性格によるところが大きく関わってくるため、どの程度を強要と感じるかは人それぞれです。大人数に囲まれて強要されるなど、自分の力ではどうにもならないことも時にはあるかもしれませんが、アルハラに対して自分の身は自分で守る、という心構えが必要です。

まず、アルハラを受けないようにするためにできることとして、お酒が飲めないと公言することが大切です。時には「体質的に飲むことができない」というような相手が強制できないような環境を作るのもいいかもしれません。周囲の人に公言しておくことで、お酒を強要してくる人がいたとしても、周囲の人が助けてくれるといったことも期待できますし、飲めないのであれば勧めるのをやめておこう、という抑止力にもなります。

そして、もしアルハラを強要された時のために、お酒を断る言い訳をいくつか用意しておくことも有効です。例として、以前お酒を飲んで救急車で運ばれた、などの過去の失敗の経験を話すこと、今日は薬を飲んでいてお酒を飲めない、ということなどが有効です。また、コップに飲み物が常に入っている状態にして、お酒を注ぎづらい状況を作ったり、万が一飲むように言われても良いようにこっそりノンアルコールのドリンクにコップの中身を入れ変えたり、頻繁に席を移動して被害の対象になることを避けたりするのも良いでしょう。イッキ飲みの雰囲気が出てきたら会場の外に出る、などの行動も有効です。

特に若いうちは、自分がどれだけお酒を飲むことができるか、という限度を把握していないことが多いので、つい盛り上がって羽目をはずしてしまうことも多い飲み会の場ですが、強要されたまま飲み続けるのはとても危険なことです。固く考えすぎのように感じられるかもしれませんが、飲み会の場に参加することになったら、例え強要されても自分の限界までお酒を飲まない、自らお酒を飲まされる環境を作らない、無茶ぶりされても、きちんと、そしてきっぱりと断るなど、アルハラに対して自分の身は自分で守るようにしてください。

アルハラは、数あるハラスメントの中でもアルコール中毒になってしまったり、最悪の場合死に至ってしまったりと非常に危険性の高いものです。しかし、日本人の性格や、集団を大切にする風土なども相まって、勧められたお酒を断るということがなかなかできなくなり、アルハラ自体を無くすことは難しい問題となっています。しかし、本来お酒を飲むことは楽しいことであるはずで、良いコミュニケーションを生み出す、と言う側面もあります。アルハラの危険性を全ての人がきちんと理解し、お酒を飲むことを強要したりすること無く、その場を皆で楽しむことが出来るようになれば、アルハラは減少していくのかもしれません。

記事 メンタルヘルスコンディショニング講座講師・佐々木幹

佐々木幹

佐々木幹メンタルヘルスコンディショナーⓇ

投稿者プロフィール

株式会社スマイルエデュケーション3代表取締役

大手民間スクールで約30年間スクール経営に携わり、販売マーケティングを皮切りに、商品開発室、教務室、学務室、通信教育センターの各部門責任者を歴任

現在は、自身が企画したメンタルヘルスコンディショニング通信講座の資格(メンタルヘルスコンディショナー)を取得し、「Live」「Love」「Smile」をかけ合わせた造語『LiLoveS』をコンセプトとしたハッピーライフカウンセリング協会と、学ぶすべての方の笑顔を目指すSmileCom(スマイルコム)のスクール運営を行う一方で、当サイト(メンタルヘルス情報サイト)の記事執筆を手掛けている。

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https://smile-learn.com/product/

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コメント

    • まほ
    • 2019年 4月 26日

    お酒が飲めないわけではないですが、大学生の時に自分のキャパを超えた量のお酒を先輩に飲まされて記憶をなくしたことがあったなあと思いだしました。当時はまだアルハラという言葉も知らなかったので、飲みすぎてしまったという後悔ばかりでしたが、今思うとアルハラだったのだなあと思います。たくさんの人にアルハラから身を守る方法を知っていてほしいですね。

    • 佐々木幹
      • 佐々木幹
      • 2019年 5月 14日

      まほさん

      投稿ありがとうございます。
      私はお酒も飲み会も大好きです。
      最近こそありませんが、若い子に「結構飲ませてたな」と思い返すこともあり、笑って受けてくれていたのでお互い楽しい時間を共有していると思ってました。
      今思うと、「合わせてくれていただけかも?」などと思い返すときがあります。
      今は、最初だけお酌し合って、2杯目以降は手酌で飲む!というのがマイルールになっています。

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