産業カウンセラーってどんな仕事?
- 2019/6/11
- 心理の資格
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職場などで、産業カウンセラーという言葉を耳にしたことはありませんか?以前から、ビジネスシーンにおいて産業カウンセラーは注目を集めており、日本国内では知名度の高い存在でした。精神的な問題を取り扱う仕事や資格は、ストレス社会と言われる現代社会において、非常に増えてきておりまた重要視されています。その中で、産業カウンセラーとは一体どのような特徴のある仕事なのでしょうか?実際にどういった仕事をしているのか、どのような場面で活躍することができるのか、そして産業カウンセラーになるためにはどうしたら良いのかなどをご紹介していきます。
産業カウンセラーとは何か | どのような場所で活躍できるのか | 産業カウンセラーになるには? |
産業カウンセラーとは何か
産業カウンセラーとは、主に企業で働く人や組織を対象にカウンセリングを行う資格です。簡単に言うと、働く人々を支援するカウンセラーであり、心理学的な手法や考え方を用いて、働く人たちが抱える心の問題を自分自身の力で解決できるように援助をしていくことを仕事とする人々です。例えば、仕事や職場内での人間関係や労働環境によって起こるストレスや精神的な問題に関する相談に関しては、相談者の意見に耳を傾け、適切なアドバイスを送ります。
また、仕事を通しての自分自身の生き方の設計や、仕事において自分がこれからどうなって行きたいか、というキャリア形成に関する不安、会社自体や人事制度への不安などに対しては、働く人が自分自身で問題を解決し仕事に正面から向き合っていき、自分の仕事における今後の設計をきちんと行い、それに向けたキャリアアップを行っていけるようにアドバイスをして援助していく、という役割も担っています。
参考:一般社団法人 日本産業カウンセラー協会ー産業カウンセラー協会の3つの活動領域ー
人生100年時代が到来し、それ自体はとても結構なことなのですが、少子化にともなう年金不安、退職金の減額や廃止、バブル崩壊で明らかになった年功序列・終身雇用の崩壊、介護問題、AIやロボットなどテクノロジーの進展による消えゆく仕事、外国人労働者の受け入れなど、ネガティブに考えれば、今の日本は将来不安の枚挙にいとまがありません。
それに加えてもちろん働く人は、職場で多かれ少なかれ何かしらのストレスを感じているのでいる人も多いので、人生を有意義で充実したものにすることは容易なことではありません。そのような精神状況で行う仕事は、決して良いパフォーマンスが発揮できるものではありません。これは働く人にとっても、企業にとってもよいものではありません。これらを解決し、良い方向へと導いていくことが産業カウンセラーの主な仕事と言えます。企業も、自社の環境を向上させ、社員のパフォーマンスを上げて会社全体のパフォーマンス向上のために、重視している有力な1つの存在として産業カウンセラーは大いに期待されるべき存在と思います。
余談ですが、将来不安などはネガティブに考えれば、どんどん増大していきます。そのような負のスパイラルに陥りそうな時は、ぜひ、当サイトの記事「ポジティブ心理学とは」も参考にしてください。
どのような場所で活躍できるのか
産業カウンセラーはその名の通り、産業社会つまり職場においてなんらかのストレスや精神的な問題、悩みを抱えた人々の話を聴き、問題の解決へと迎えるよう援助していくことが主な仕事となります。実際の産業カウンセラーたちはどのような職場で、どのような職種で活躍されているのでしょうか?少し古い資料となりますが、一般社団法人日本産業カウンセラー協会の産業カウンセリング研究所が、創立50周年記念事業の1つとして「産業カウンセラー等の実態調査」を発表されています。
調査は2009年に当時の産業カウンセラーに対して実施され、有効回答者数は14,776人でした。
以下、調査内容の1部を引用させていただきます。
『就労形態』
正社員(常用雇用者):49.6%
契約社員:12.3%
女性:「正社員」43.7%、「契約社員」13.1%、「パートアルバイト」8.9%、「主婦」7.9%
男性:「正社員」59.0%、「契約社員」10.8%、「経営者(自営業主)」9.0%、「定年退職者」5.9%
『勤務先の業種』
公務:20.6%
製造業:12.9%
女性:「医療業」12.5%、「教育・学習支援業」10.2%、「製造業」10.0%
男性:「製造業」17.3%、「サービス業」10.7%、「教育・学習支援業」8.0%
『勤務先での職種』
一般事務:16.9%
カウンセラー:15.6%
女性:「一般事務職」18.8%、「保健・看護職」17.0%、「カウンセラー」15.9%、「人事労務職」5.6%、「管理職」4.6%
男性:「管理職」20.1%、「カウンセラー」14.7%、「一般事務職」13.5%、「人事労務職」9.3%
一般社団法人日本産業カウンセラー協会では、「働く人の悩みホットライン」や全国各地でのカウンセリング「全国相談室一覧」などの活動もされています。
数字からもわかるように一般企業の場合、人事担当者や教育担当者、総務担当者などが産業カウンセラーの資格を取得し、兼任していることも多いです。産業カウンセラー単体としての求人はほとんどありません。しかし、職場における精神的な問題やストレスを感じる人、仕事内容や自分の将来設計において不安を感じる人などが非常に多い現代社会において高いニーズがあり、同じようにメンタル面の問題を取り扱う民間資格の中では、協会もしっかりされており、より現実的で、信頼性の高い資格であると言えるでしょう。
社員全員がストレスなく働くことが出来るような環境を提供することは、企業にとって大切なことですし、職場の人間関係でストレスが溜まり悩んでいる方が年々増えているため、社員の心の問題をケアをすることは、現代のビジネスシーンにおいてとても重視されています。社員が心の健康を害していると生産性の低下へとつながり、会社全体に関わる大きな問題に繋がってしまうこともあるため、職場のストレス対策を講じ、社員1人1人のストレスを上手く緩和するためのサポートが必要不可欠です。また、こうした取り組みは、経済産業省が中心となり国策としても推進されています。興味がおありの方は、当サイトの「健康経営とメンタルヘルス」も是非参考にしていただきたいと思います。
産業カウンセラーになるには?
これから益々必要性が高まるであろう産業カウンセラーになるためには、どのようにすれば良いのでしょうか?
まず必要なことは、一般社団法人産業カウンセラー協会が実施している試験に合格して認定資格を得ることです。この資格試験は、大学院研究科において心理学隣接した諸科学、人間科学、人間関係学のいずれかを修了している場合、受験することができます。これらに該当していない方であっても認定を受けた養成講座を修了すれば、試験の受験資格を得ることができます。詳しくは一般社団法人産業カウンセラー協会「産業カウンセラー試験」の受験資格をご確認ください。
養成講座では、多くの時間が面接の実習にあてられるようにカリキュラムが組まれています。これは、産業カウンセラーの最も大切な能力とされる傾聴の基本的な態度や手法を習得することを目的としているからです。産業カウンセラー養成講座では、メンタルヘルスの推進や、キャリアカウンセリング、人間関係の開発などに役立つ専門的な知識と技能の習得、そしてこれらの基礎となる傾聴について学び、身に付けることができます。
カウンセリングの種類は非常に多いですが、どうしても必要となるスキルが傾聴です。傾聴とは共感と受容で、悩みを抱えた人の話を聴き、話してくれたことに評価や批判することなくただ受け入れて、その思いに寄り添い共感していくことを言います。相談者の話は甘えがあったり、わがままであったりすることも少なくないのですが、まずは話を否定することなく聞いてあげることで、心を開き安心して話をすることができるようになり、問題を解決する糸口を見つけられるようになります。この傾聴を出来るか出来ないかが、産業カウンセラーとして実際に悩みを抱える人を救えるかどうかに関わってきますので、傾聴をきちんと習得出来る講座やスクールを選ぶことが重要です。
産業カウンセラー協会の養成講座にはe-Learninngと通信がありますが、どちらも104時間の面接(ロールプレイング)が義務付けられており、実技がない民間のカウンセラー講座とは全く異なります。講座料金も20万円以上して決して安くない料金ですが、この104時間の面接を考えると講座料金はむしろ安いと言えるかもしれません。104時間の面接傾聴のロールプレイは、10人程度までのグループに指導員(トレーナー)がつく形で行われます。口コミサイトには「悩みがないのに悩んでいる相談をするのが苦痛だった」などの不満もあるようですが、「人の話を上手に聴けるようになった」など高評価も多いです。ただ指導員のレベルには差があるようですので、事前に自分が受ける地区の協会支部に行かれて、そのあたりを確認しておくと良いのではないでしょうか?
ストレス社会と言われることの多い現代社会において、大きな問題となるのが働く人々の心の問題です。企業がより円滑に成り立ち、良いパフォーマンスを発揮して成果を残す為には、職場環境の改善と働く人々の充実感や心のケアが非常に重要です。しかし、実際には何かしらのストレスを抱えて苦しんでいる人が多くいます。これらの人々の苦しみを解決へと導き、企業全体、そして社会全体をより上質なものにしていくためにも、産業カウンセラーは今後益々活躍が期待される仕事です。
産業カウンセラー協会は、「会員として全般的に満足している人は45.9%と半数に達しませんでした。」とか「会員になっている目的の1位は産業カウンセラーを名乗るため51.2%」など、実に正直に産業カウンセラーの声を公開されており、とても信用できる団体だと思われます。
引用元:「会員支援サービスに関する調査」の報告ー2014年11月実施ー
養成講座を受けることで、基礎知識や傾聴の手法などをしっかりと見につけることが出来るので、志す方は、養成講座の受講を検討してみてはいかがでしょうか。
記事(初版 2017年6月7日) メンタルヘルスコンディショニング講座講師・佐々木幹
コメント
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産業カウンセラーの資格が有るんですね。ほかの心理カウンセラーの資格を持っているだけじゃできないのかな。
傾聴することが大切とのことでしたが、確かに誰かに聞いてもらうだけで心が落ち着くことってありますよね。
ストレスを抱えて仕事をしている人って多いと思いますし、少しでも働く人の心が軽くなるように、産業カウンセラーという仕事がもっと広がれば良いなと思いました。
429さん
投稿ありがとうございます。
はい。429さんのおっしゃる通り、少しでも面接トレーニングを積んだ産業カウンセラーが広がると良いと思います。ただ、医者や弁護士と違い、産業カウンセラーという資格は業務独占資格ではないので、産業カウンセラーという仕事が増えるとは思えませんが・・・
いづれにしてもココロについて正しい知識を持った人が増えていくことは、今後の日本にとってとても大切だと思います。
産業カウンセラーという仕事があるということにびっくりしました。
仕事について悩みがある場合はメンター制度とかはあったので、そこで解決してましたが、産業カウンセラーがいれば上司などに話しづらいことも話しやすくなるということはありそうだなと感じました。
逆に産業カウンセラーがいれば上の役職の人が悩みを相談できるかもしれないですし!
もっといろんな会社に広がってほしいなあ。
心さん
投稿ありがとうございます。
心さんがおっしゃるように、ストレスやキャリア形成に関する悩み、各種ハラスメントなどの正しい知識と経験を持つカウンセラーが、いろんな会社に広がっていけば”ブラック”も少しはホワイトに近づくかも?ですね。