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アルコール依存がもたらすもの
- 2019/1/25
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- 4 comments
アルコール依存症とはどんな状態か、どうしてアルコール依存症(※)になってしまうのか、ということについては当サイトの別記事に詳しくありますので、ぜひ、そちらもお読みください。
※関連記事:アルコール依存症とは
アルコール性肝障害とは | アルコール性肝障害の進行 | アルコール性肝障害の治療 | アルコホーリクス・アノニマス(AA)とは |
アルコール性肝障害とは
今回はアルコールによる肝臓の障害について、死に至るアルコールの恐ろしさやアルコールによる脳の障害についてお伝えできればと思います。
まず、肝臓ですが、人体の右上腹部、横隔膜の下にある人体最大の臓器(重さ1.2kg)です。肝臓には、酸素が運ばれる肝動脈と、栄養素が運ばれる門脈、そして栄養素やタンパク質を全身へ送る肝静脈と呼ばれる血管が通っています。肝臓はこれらの血管を通って入ってくる酸素や栄養素を使って、栄養素の代謝・貯蔵、タンパク質の生成、有毒物質 (アンモニアなど)の解毒などの役割を果たしています。このように、肝臓は生命維持にとても重要な臓器なのです。肝機能異常が軽い時期には、お腹が張る、疲れやすい、食欲がないなどの自覚症状がみられることがありますが、なかなか自覚しにくく、沈黙の臓器とも言われ、病状がかなり進行してから治療が開始されることも多くあります。
アルコール性肝障害とは、日本アルコール医学生物学研究会(JASBRA)診断基準(2011年)によると、5年以上の長期にわたる過剰の飲酒が肝障害の主な原因と考えられる病態で、以下の条件を満たすものを指します。
1.過剰の飲酒とは、1日に純エタノールに換算して60g以上の飲酒
2.禁酒により 血清AST、ALTおよびγ−GTP値が明らかに改善する
3.B型肝炎やC型肝炎などの肝炎ウイルスマーカーや抗ミトコンドリア抗体、抗核抗体などの自己免疫性の肝臓病を疑う検査値がいずれも陰性である
別の肝臓病がなく、過剰の飲酒が長期間あり、禁酒すると肝機能検査の数値が改善する、ということですね。
早めにアルコール性肝障害およびアルコール依存症の適切な治療が開始できれば良いのですが、健康診断の結果に関心を持たなかったり、本人に禁酒の意思がなかったりすると、なかなか診察までたどり着けません。また、医師の診察時に飲酒量を少なく申告するする傾向があり、客観的な評価のためには、第三者(家族、友人、職場の同僚など)からの聴取も必要となります。
アルコール性肝障害の進行
過剰な飲酒を継続すると、アルコール性肝障害はどのように進行していくかを解説します。アルコール性肝障害はアルコール性脂肪肝、アルコール性肝炎またはアルコール性肝線維症、アルコール性肝硬変、さらに進行すると肝不全や肝癌につながり、死に至ります。また、その経過でも様々な合併症が起こってきます。
アルコール性脂肪肝
肝臓に脂肪が蓄積した状態です。画像診断では超音波検査やCT検査で確認できます。常習飲酒家の90%に脂肪肝が認められ、飲酒の継続により、そのうち10~20%がアルコール性肝炎へ進展します。
アルコール性肝炎
慢性のアルコール性肝障害の方が大量飲酒をきっかけに発症する急性肝障害のことです。重症型アルコール性肝炎は、禁酒しても肝腫大が持続し、肝性脳症、肺炎、急性腎不全、消化管出血、エンドトキシン血症などを合併し、多くは1ヶ月以内に亡くなると言われています。重症アルコール性肝炎の生存率は不良で合併症の消化管出血と感染症で死亡率が高まります。
アルコール性肝線維症
肝臓の組織が線維化(だんだん硬くなる変化)していきますが、多くは、自覚症状を認めません。このうち10~30%が肝硬変へと進展していきます。
アルコール性肝硬変
アルコール性肝炎患者が、重症化することなく長期に大量飲酒を継続すると、線維化が進行し、肝硬変へ至ります。男性では、日本酒5合を20~30年、女性では男性の3分の2の飲酒量を12~20年で肝硬変に進行するとされています。肝臓の表面は凸凹し、萎縮するなど、形態上の変化が見られます。肝臓の中を流れる門脈という血管に圧がかかってしまい、門脈圧亢進症という状態も引き起こされます。門脈圧亢進症になると肝臓に行くはずの血液が肝臓周囲の静脈に流れ込み、脾臓が腫れたり、脾静脈瘤、食道静脈瘤ができてきます。食道静脈瘤が破裂する危険がある場合は食道静脈瘤の治療も必要になってきます。腸内で産生されたアンモニアは体内へ吸収されますが、肝機能が低下したり、門脈圧亢進症によって肝臓と迂回する血管ができてくると(側副血行路、シャントと言います)アンモニアが脳まで到達し、「肝性脳症(アンモニア脳症)」 を引き起こすと考えられています。「肝性脳症」では様々な症状が現れますが、異常に気付きにくい軽度の状態から、意識を消失する「昏睡」までその程度(昏睡度)に応じて、I~Vの5つに分類されています。また、アルコール依存症者に占める認知機能障害の割合は非常に高く、60歳以上の依存症者では40%以上に物忘れ以上の認知機能障害が認められているという報告もあります。
アルコール性肝癌
アルコール性肝硬変のうち、3~10%に肝癌が発生します。アルコール性肝硬変からの肝癌の発症には、年齢、男性、肥満、糖尿病が危険因子になると報告されています。また、WHOのInternational Agency for Research on Cancer (IARC)は、アルコール飲料が肝臓の他に口腔、咽頭、喉頭、食道、大腸、女性の乳房のがんの原因であることを認め、「アルコール飲料」「アルコール飲料中のエタノール」「飲酒と関連したアセトアルデヒド」は発癌性への根拠が十分なGroup 1の発がん物質に認定されています。
アルコール性肝障害の治療
アルコール性肝障害の治療の基本は断酒です。断酒を補助する目的で抗酒剤が用いられることがあります。アセトアルデヒドの肝臓での分解を抑制し、吐き気などの不快な症状を起こすことでアルコール類の摂取を避けさせるために使用されます。
アルコール依存症の治療には心理的・社会的アプローチが必要です。断酒会への参加や、自治体による節酒や断酒に関する啓発活動など、過剰な飲酒を続ける方に対して寛容になり過ぎない社会を構築していくことが重要です。
アルコホーリクス・アノニマス(AA)とは
アルコール依存症と向き合うことは、本人にとってもご家族にとっても、とても大変で力がいることです。そこで、アルコホーリク(問題飲酒者)同士が支え合うという相互援助グループが「アルコホーリクス・アノニマス(AA)」として米国から発祥し、日本でも広く展開され、アルコール依存症と向き合う方々を支えています。AAには匿名で参加することもできます。
AA日本ゼネラルサービスのホームページではAAについて次のように説明されています。もし、助けが必要と感じたら、AAに参加することも選択肢として持っておくことが良いでしょう。
“AAとは、さまざまな職業・社会層に属している人々が、アルコールを飲まない生き方を手にし、それを続けていくために自由意志で参加している世界的な団体です。AAのメンバーになるために必要なことは、飲酒をやめたいという願いだけです。会費や料金は必要ありません。
現在、およそ180以上の国と地域に10万以上のグループが存在し、メンバー数は200万人以上です。(日本には600以上のグループが存在し、メンバー数は5,700人以上と推定されています)
AAのオープン・ミーティングにはだれでも参加できます。このミーティングでは、通常、司会者と2~3人のメンバーが自分のアルコホリズムとAAでの回復に関する話をし、経験を分かち合っています。またAAを、アルコホーリク(アルコール依存症者)でない一般の人たちに知っていただく目的で開く特別なミーティングもあります。これに対して、クローズド・ディスカッション・ミーティングはアルコホーリクだけが参加できるものです。“
AA日本ゼネラルサービスのホームページ
(参考資料)
・国立国際医療研究センター研究所 肝炎情報センター
・あすか製薬「疾肝啓発〜よくわかる肝臓の病気〜」
・アルコール依存症に併存する認知症 松下 幸生,松井 敏史,樋口 進
特集 精神障害が併存するアルコール依存症の病態と治療 精神経誌(2010)112巻 8号
記事 メンタルヘルスコンディショナー・白石真樹
コメント
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今まで禁酒なんて考えたこともなかったけど、去年一度肝臓をやってしまったので、
現在禁酒を断行中。やっぱ病気は怖いよね。
飲んべえさん
投稿ありがとうございます。
コメントを拝見する限り、飲べえさんの肝臓はかなり良い方向に回復されているようですね。
ご自愛くださいませ。
私も毎晩お酒をたしなむので、白石さんに投稿いただいたこの記事には、痛いところを突かれた感じてす(笑)。
ココロとカラダは表裏なので、お互い気をつけた方が良いですね。
飲み会とか多くて休肝日作らないとなーとか思っているけどなんだかんだ飲んでしまっていたのですが、この記事を読んだらちょっと焦りました。
アルコール依存ほどお酒飲んでないとは思うけど・・・自覚ない場合もあるんだろうな。
病気は怖いのでほどほどにします。
やいろすさん
投稿ありがとうございます。
毎日のように飲酒する方のほとんどは、やいろすさんと同じく「休肝日作らないとなー」って絶対思ってます。
私も、もちろん思ってます。
肝臓って、ものすごく精緻にできていて、一度故障すると治療が極めて困難!みたいな事、いろいろな場所で見聞きしますし・・・
ストレスにならない程度に断酒しましょう。