何かと情報が氾濫する現代社会にあって、集中力を高められるマインドフルネスがここ数年ひとつのキーワードになりつつあります。日頃の雑念を捨て、日常から隔絶された空間で自分自身と向き合うことは、ある意味で現代人にもっとも欠けている生活習慣なのかもしれません。マインドフルネスの原点は仏教にあると言われています。宗教的な印象があるかもしれませんが、実際には少しも堅苦しいものではありません。東洋的な瞑想の考え方をひもといていくなかでマインドフルネスの正しい方法とそれによって得られる効果について解説していきます。
メディアでも注目のマインドフルネス!気になるその源流とは
瞑想、忘我、自己覚醒。マインドフルネスの訳語として、これらの日本語が挙げられます。このうち、マインドフルネスの特徴を最もよく表しているキーワードは瞑想です。瞑想は本格的なスタイルでは実際にきめられた姿勢で、目を閉じ呼吸に意識を持っていき、静かに気持ちを落ち着けるメソッドが提唱されています。ただ、瞑想はあくまでも形式のひとつであり、忘我の境地に達することがその本質であると指摘する専門家もいるようです。
瞑想や瞑目を基本とするマインドフルネスは、仏教や東洋思想をベースに置いています。仏教における最終的な歓びは悟りです。宗教色を取りのぞいているため悟りを目標にはしていませんが、瞑想による忘我の境地をひとつの到達点としているところに東洋思想との共通点があります。仏教と同じく東洋的であると言われる大きな要因は、非合理性をあえてその内部にとどめているところにあります。何事においても合理性を追求する西洋思想とは違い、ある種非合理な、理屈では割り切れない精神性にこたえを求める東洋思想は混沌とした現代社会だからこそ重要な役割をもち、現代人によってひとつのよりどころになっているのかもしれません。
一方で、純粋な心理学としてマインドフルネスを研究しようという流れもあります。科学として見た場合、特に集中力の向上という面で脳内にプラスの影響が表れるというデータがあります。正式なメソッドによって一定時間瞑想をおこなった場合、集中している状態の時に分泌される神経伝達物質の濃度が脳内で濃くなり、長期的に物事の見通しを立てる能力が高まる効果があることがわかっています。実際、日々多忙を極める米国のトップ企業社長の多くは、日常の習慣に瞑想を意識的に取り入れることによって集中力を高め、難しい判断に必要な思考力を養っているそうです。
しかし、科学的にも有効性が認められつつあるマインドフルネスにも、ネガティブな評価はあります。一切の薬物やリハビリによる治療を行わないため、一種の暗示効果ではないかとの批判が多いのも事実です。しかしながら、東洋医学においては治療上の暗示効果を積極的に評価しています。具体的な治療法を試みなくても、瞑想という究極の暗示によって安らぎが得られるのならそれは大きな成果である、というのがマインドフルネスの考え方なのです。
マインドフルネスをすることによって得られる効果
マインドフルネスは、「心が今、起きていることに対して100%集中する」ことです。最近ではマインドフルネスの有効性を示す研究結果が発表されていることもあり、Googleといった有名企業のなどでもマインドフルネスが導入されています。また、イチローやスティーブジョブスといった有名人も実践していることでも有名のようです。そんなマインドフルネスがどのような効果があるのか見ていきましょう。
1.集中力が増し多くの成果が期待できる
マインドフルネスを実践することによって、集中力が増します。また、集中力が増すことで、より長い時間作業することに集中することができるため、効率的に時間を使うことにも繋がります。そのため、同じ時間でも多くの成果が期待できるといわれています。
2.脳へのリフレッシュ効果
マインドフルネスを定期的に続けることによって、脳がリセットされます。無駄に使われていた脳をリセットし、マインドフルネス実践後にまた、脳を開放することで今まで気づかなったことに気づけたりします。
3.些細なことを気にしなくなる
マインドフルネスを行うことで、例えば嫌な感情が発生した場合、客観的に自分の感情をとらえることができます。自分の感情を理解すれば、その時の感情に振り回されることなく、自分を落ち着かせるなどができるようになるようです。
4.うつ病など病状への効果
マインドフルネスは、病状にも効果もあるといわれています。その例としてうつ病があります。うつ病の症状の人を対象にマインドフルネスを行うグループと薬治療グループに分け2ヶ月間実験を行った結果、前者の方のマインドフルネスを行った人が薬で治療した人に比べて再発率が低いことがわかったようです。このようにマインドフルネスには、うつ病の再発を抑える効果があると言えます。また摂食障害の人にもマインドフルネスは効果があるといわれており、マインドフルネスを行うことで過食傾向に歯止めがかかったそうです。
5.ダイエット
ストレスがかかると、コルチゾールが体内に分泌され、肥満のもととなる血圧や血糖値が上昇します。逆にリラックスするとコルチゾールが減少するといわれています。そのためマインドフルネスを定期的に行い身体ともにリラックス状態へとすることで、肥満予防・ダイエットにも繋がるといわれています。
他にもマインドフルネスには、体内の免疫力UPやヒーリング効果を高めるなどたくさんの効果があることがわかっています。
マインドフルネスの効果を最大限に高めるテクニック
マインドフルネスのやり方は、まず背筋を伸ばしリラックスし、次に「ストレスをなくしたい」などと心の中で念じます。最後に鼻から息を吸って鼻から息を吐く呼吸方法で呼吸に意識を集中させます。このようにマインドフルネスは特別な道具などを必要としないため、比較的すぐに誰でもはじめることができます。しかし、マインドフルネスを効果的にするためにはいくつかコツがありますので、効果を最大限に高めるテクニックを紹介していきます。
1.姿勢は背筋を伸ばす
これは瞑想の基本といわれています。その理由としては、瞑想時に身体を動かしてしまうと、深い瞑想状態に入っていてもすぐに元に戻ってしまうからのようです。そのため、良い姿勢を維持して背筋を伸ばすことによって、より効果的なマインドフルネスを行うことが可能になります。
2.瞑想は少しずつならす
普段瞑想などをおこなっていない人が、いきなり長時間瞑想しようとしても、手足がしびれたり、集中力が切れたりしてしまいがちです。そのため、はじめは5分~10分程度と短めに設定し、慣れてきたら徐々に時間を長くしていきましょう。
3.頭の中の雑念を無理に追い出そうとしない。
目をつぶると、次第に雑念が思い浮かぶこともあります。例えば明日の晩御飯何しようかな?今週末はどこのカフェに行こうかなど。瞑想しているから無の状態に持っていかなくてはいけないとむやみに雑念を消そうとするかもしれませんが、この行為は次第にストレスになってしまいます。そのため雑念を無理に追い出そうとするのではなく、思考を客観的に観察してみるようにしてみてください。例えば、明日の晩御飯何しようかなと考えていることに気づいたら、夕食に迷っているんだなと客観的に見るようにしましょう。次第に思考と自分自身は別の存在であることがわかってきます。
4.集中は呼吸におく
マインドフルネスの瞑想は呼吸に始まり呼吸に終わるといわれています。そのため、鼻に空気が通り抜けるのに意識を向けてましょう。気が散った場合も、いったんほかのものに注意を向け、また呼吸に意識を戻して集中しておこなうといいでしょう。
5.快楽を求めないこと
瞑想を続けると、幸福感が来ることがあるといわれています。この幸福感を求めてしまうと、効果が薄くなってしまうようです。なぜならマインドフルネスの瞑想は、「今」に意識をとどめることが大事で、過去や未来に固執してしまうと本来のマインドフルネスの効果を得ることが難しくなってしまうからです。
マインドフルネスの効果を最大限に引き出すためには正しい方法を習得するのが重要ですが、形式ばかりにこだわるあまり行為そのものに集中できないのでは意味がありませんよね。「こうすれば集中できる」という自分がマインドフルネスを行いやすいスタイルをひとつ見つけ、日々のルーティンに取り入れることから始めてみましょう。
マインドフルネスは東洋思想に源流をもつ、瞑想によって集中力を高めるメソッドのひとつといわれています。東洋思想に影響を受けながらも宗教的な色合いを排除し、心理学や西洋医学などの科学のエッセンスを取り入れているところにマインドフルネスの特色があります。正式なメソッドによって行うことにより集中力だけでなく免疫力なども向上すると言われており、一流のアスリートにもマインドフルネスをおこなうことをルーティン化しているケースが少なくありません。最初のうちは形式をあまり意識せず、日常のなかで取り入れやすい範囲で続けていくと安定した効果が得られるといわれています。
記事 メンタルヘルスコンディショニング講座講師・佐々木幹
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