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健康経営とメンタルヘルス
- 2019/1/21
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- 2 comments
「健康経営」という言葉を皆さんは耳にしたことがあるでしょうか?
会社経営者や人事に関係するお仕事をされている方は、商工会議所や健康保険関連、生命保険会社などのセミナーで話を聞いているかもしれません。また、現在のお勤め先が健康経営に取り組まれていれば、健康を増進させるような取り組みを社員一丸となって進められていることと思います。
健康経営とは何か | 健康経営の推進 | 健康経営優良法人の認定基準 | 健康経営におけるメンタルヘルスの位置付け |
健康経営とは何か
健康経営について経済産業省ホームページでは下記のように定義され、「健康経営」は特定非営利活動法人健康経営研究会の登録商標となっています。
“「健康経営」とは、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することです。企業理念に基づき、従業員等への健康投資を行うことは、従業員の活力向上や生産性の向上等の組織の活性化をもたらし、結果的に業績向上や株価向上につながると期待されます[1]。”
経済産業省が中心となり、国策として健康経営が推進されている背景には
「生産年齢人口の減少」
「高齢者人口割合の増加による従業員の高齢化」
「平均寿命の延長と医療の高度化による国民医療費の増大」
といった日本にとって非常に重要な課題があります。
内閣府の経済財政諮問会議資料「2030年展望と改革タスクフォース報告書」にこれらの課題について詳しい予測がされています[2]。
*生産年齢人口の減少
2030年にかけて、生産年齢人口の減少が加速。国際的にみても、日本の生産年齢人口の減少率は大きい。労働参加が進展しても、2030年までに就業者数は減少する見込み。
*出生率と2030年の人口
2016年の出生数は100万人を割り込み、出生率が上がらなければ75万人程度まで減少。
一方、2030年の合計特殊出生率が1.8まで上昇すれば出生数は100万人程度を維持する見込み。
*高齢化とその影響
75歳以上人口は2030年に一旦ピークを打ったのち、緩やかに減少。2030年は1つの山となる。医療費、介護費等の支出の増加、認知症患者数の増加が予想されている。
*高齢者の就業意欲と健康寿命
日本の高齢者の就業意欲は他国と比較して高い。仕事をしている高齢者は、生きがいを感じると回答した割合が高い。
2013年の健康寿命は、男性が71.19歳、女性が74.21歳。健康寿命が5歳程度延伸した場合、平均寿命との差である日常生活に制限のある期間が短縮される。
高齢者の体力・運動能力は改善。15年間で5歳下の年齢階級のスコア並に向上。
*社会で活躍する人材の高齢化
経営者年齢は、高齢化が進んでいる。高齢の経営者ほど、投資意欲が低下し、リスク回避的行動をとる傾向。売上高が増加傾向と回答した企業の割合は、30代経営者が最も高く、年代が上昇するにつれ低下。経営者が交代した企業は利益率を向上させる傾向。
健康経営の推進
日本における人口変化と働き方の課題解決にあたり、健康経営は2014年「日本再興戦略」において取り上げられ、2015年には経済産業省と東京商工会議所が共同で健康経営の取り組みと財務面の双方に優れた上場企業を「健康経営銘柄」として一業種一銘柄のみ選定して投資家にアピールする取り組みが始まりました。また、2015年に官民協働の健康寿命延伸と医療費最適化の活動を行う組織「日本健康会議」が発足して活動指針の「健康なまち・職場づくり宣言2020」が策定され、具体的な目標値のある活動がスタートしました。2016年には健康経営の取り組みに優れた企業を「健康経営優良法人(ホワイト500)」として認定する仕組みが始まりました。健康経営優良法人は企業規模別に大規模法人部門と中小規模法人部門に分かれています。
健康経営優良法人の認定基準
従業員を資産と捉え、従業員の健康に投資することで企業の健全性・生産性・持続性を高めている企業を認定する」健康経営優良法人」の認定基準や評価基準は毎年変更がありますが、基本コンセプトは次のようになっています。また、大規模法人部門と中小規模法人部門で細部での相違があり、中小企業にとっては実情に合わせて取り組み易いものになっています。
1. 経営理念
2. 組織体制
3. 制度・施策実行
4. 評価・改善
5. 法令遵守・リスクマネジメント
健康経営におけるメンタルヘルスの位置付け
健康経営優良法人の認定基準の中で、メンタルヘルスは「制度・施策実行」の中に「メンタルヘルス対策(メンタルヘルス不調者への対応に関する取り組み)」として位置づけられています。また、関連項目として「50人未満の事業場におけるストレスチェックの実施」、「コミュニケーションの促進に向けた取り組み」、「過重労働対策」も設定されています。
「メンタルヘルス対策」としては、メンタルヘルス対策を推進しようという経営者の姿勢が重要で「心の健康づくり計画」を策定していきます。産業医や地域産業保健センターなどの協力を得ながら実行性のある実施体制を作っていきます。「職場環境の改善やストレス耐性を高める」、「不調者の早期発見と対策」、「不調者の休職支援・職場復帰支援・再発防止」といった仕組みが必要です。
「ストレスチェック」は従業員が自身のメンタル不調を予防するために、現在の「ストレス要因」、「自覚症状」、「周囲の支援」を知ることができます。不調を未然に防ぐために、自身のストレス状態に関心を持ったり、対処法の情報提供についての取り組みも同時に行っていくことが重要です。高ストレス者は本人からの申し出があれば医師の面接指導を行うのですが、面接指導のハードルを下げ、必要な従業員が適切に医師と面接できるような配慮・啓蒙が大切です。条件が満たされれば、集団的分析結果を得ることもできるので、職場環境の改善につなげていくこともできます。
経営者が方針を明確化して情報共有を適切にすること、それに対して従業員一人一人のワーク・エンゲイジメント(仕事に対する積極的な姿勢)を高め、職場を活性化していくような取り組みが「コミュニケーションの促進に向けた取り組み」として評価されます。
働き方改革として長時間労働が非常に問題になっています。長時間労働は精神疾患だけでなく、脳・心臓疾患の発症とも非常に関係してきます。適正に労働時間を把握するとともに、長時間労働が当たり前、といった組織風土を変えていくような取り組みが必要になってきます。「働き方改革関連法」も成立・公布されていますので、東京労働局のホームページなどを参考にしながら、法令に沿って適切に労働時間を管理していくことも必須となります[3]。
このように健康経営の中でメンタルヘルスは非常に重要な位置付けを持っています。変化する社会環境の中で、メンタルヘルスの知識を持つことは企業経営にとって必要なことなのです。経営者や管理監督者だけではなく、従業員一人一人も心身の健康と生産性の向上を自分ごととして捉え、将来の日本の姿と向き合っていくことが大切だと考えます。
『参考資料・サイト』
「1」経済産業省健康経営の推進
「2」内閣府経済財政諮問会議資料 2030年展望と改革タスクフォース報告書
「3」東京労働局「働き方改革関連法」が成立・公布されました
記事 メンタルヘルスコンディショナー・白石真樹
コメント
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健康経営と聞く体調とか身体的な病気とかそういうものに対して使われる言葉なのかなと思いますが、メンタルヘルスのような精神的な話も入るんですね。
会社で社員の健康を気にかけているというのは、周囲から見ても印象が良いですし社員としても安心するだろうなと感じます。
健康経営優良法人(ホワイト500)ってどんな会社が入ってるんだろうと気になったので調べてみようと思います!
匿名さん
コメントありがとうございます。
ブラックって言葉ばかりではなく、ホワイトという言葉も流行らせましょう。
会社名は経産省のHPですぐわかると思いますが、1位は江戸時代に黒船来航と言われたペリーが来たときにできた会社ですよ!!