心理学は近年、誰もが存在を知っている学問となり、専門的に学ぶ人も多くいます。
心の問題は、紀元前の古代ギリシャの時代からココロを解釈するために、宗教、哲学、思想など多方面からさまざまなアプローチが行われてきました。その中でも19世紀、生理学的な手法を用いることで哲学からココロの働きに関する研究を引き離し、実験心理学を説いた人物がいます。「ヴィルヘルム・ヴント」という人です。

ヴント 実験心理学 実験心理学の派生 人間性心理学 まとめ

ヴィルヘルム・ヴント

現在、心理学には様々な分野が存在しますが、世界で初めて心理学を科学的に研究したのは、ドイツの哲学者であり、生理学者であり心理学者でもある「ヴィルヘルム・ヴント」です。1897年、ドイツのライプチヒ大学に世界で初めての心理学実験室がヴントによって開設されました。これが現代心理学の誕生の象徴とされています。当時ヴントは同大学で哲学を教える教授でしたが、ハイデルベルク大学時代には医学と生理学を学び、「感覚研究」を介して、次第に心理学や認識論の領域に踏み込み、研究するようになっていきました。

ヴントは生理学的手法を用いて実験心理学を説き、生理学的手法による一定の条件下で実験を行うという、(いわば科学的な)実験心理学を創始したのです。ヴントは、1.哲学講座から心理学を独立させて体系化し、哲学部に実験心理学のための心理学教室を開設したこと、2.「民族心理学」(諸民族の精神的所産としての言語、芸術、神話・宗教、社会制度、法律、文化、歴史を対象として研究する学問分野)を体系化したこと、などによって、現代心理学の創始者とするのが現在の心理学界の共通の認識となっています。

ヴントの実験心理学

ここでいう実験とは外的刺激を被験者に与え、それによって被験者に生じる意識経験を「内観法」によって分析するというものです。ただし、内観法といっても、宗教的なあるいは哲学的な「自己省察」である内観とはまったく異なり、例えば痛みを与える刺激では痛いと感じるように、刺激に対する一定の反応を抽出して、これを1つの心的要素として解析する方法のことを指します。その結果、心的要素としての最小単位である「感覚」と「感情」を基本単位として、それらが複雑に合わさったものが表象や情緒などの情意運動であると位置づけました。ある感覚とある感情が結びつくあり方として、「連合」や「統覚」などのココロのはたらきがあると考えたのです。

このような内観法で意識にのぼった要素を分析し、これらの要素によってさまざまな意識が構成されるという考え方は「構成主義」とも呼ばれています。ヴントの実験に適応する範囲は、外的な刺激に統制されやすい感覚、知覚、感情などに限定され、その対象とする範囲は非常に狭く、記憶や思考などのような「高次精神過程」は、感情の活動をともなって意思的に心的要素が結合することにより成立すると考えられていました。ヴントの心理学はこの構成主義的な面と、最小単位であるさまざまな感覚、感情を、表象や情緒へと、それぞれの全体へまとめる統覚の考え方の面とがありましたが、主に構成主義的な面に対する批判が、精神分析学、ゲシュタルト心理学、機能心理学などの各学派から行われて、展開されるようになりました。

実験心理学の派生

メンタルヘルスコンディショニング講座:メインテキスト1<1章>心理学の歴史

ヴントの実験心理学における構成主義的な面として、「内観法によって意識を研究する」「心の要素を分析する」「意識の構成要素を重視している」という3点が挙げられます。これらの特徴を持つヴントの実験心理学に対して、フロイトは精神分析学において意識だけでなく意識化されない無意識の研究を行いました。ヴェルトハイマーはゲシュタルト心理学においてココロの働きは要素の働きや要素の集合よりも、全体的な挙動や全体の構造そのものが重要であると主張しました。またヴントが意識の構成を重視していた点に対して、ジェームズが提唱した機能心理学は意識の機能を重視するべきであると主張しました。さらに、アメリカにおいて、実験心理学は20世紀の前半にはワトソンに代表される行動主義とも結びつき、ヴントの解釈によって変わるデータには科学的な価値はないとし、それに変わるものとして観察可能な行動を心理学の対象としました。

このように、ヴントが提唱した実験心理学は時を追うごとに様々な人物によって応用されていきました。並行して、自然科学や生物学、医学も発展していくことで、現在の心理学を確立していきました。現在では、実験心理学の成果が精神疾患の治療やメンタルヘルスのために利用されたり、応用心理学として、病院などの医療機関だけではなく警察にも利用されたりしています。

人間性心理学の流れ

人間性心理学は、人の行動が無意識に支配されているとする精神分析や、外的環境に支配されているとする行動主義に対して、人間のことを自由意志をもつ主体的な存在として捉える立場を指します。マズローはこれを、精神分析と行動主義に対し第3の潮流とよびました。人間性心理学の基本的な特徴として、人間を全体として理解する、人間の直接的経験を重視する、個人の独自性を中心におく、人間独自の特質・選択性・創造性・価値判断・自己実現を重視するなどが挙げられていますが、いずれも人間や人間性、個人のパーソナリティを中心に研究する考え方が理解できます。この心理学的立場に立つ先駆者として、人間が主体的に決定しうる存在であることを強調したのは個人心理学のアドラーです。また、この立場に属する理論家や臨床家には、実存分析のフランクル、現存在分析のビンスワンガー、階層的動機論で自己実現欲求を明らかにしたマズロー、クライエント中心療法のロジャーズ、体験過程理論のジェンドリン、などが挙げられます。最近は、認知行動療法の体系に分類される合理情動療法のエリスも、人間性心理学に分類することができます。

マズローの階層的動機論とは、5層からなるピラミッド構造で示した欲求の階層モデルで、下位から上位に向けて、生理的欲求、安全の欲求、愛と所属の欲求、自己承認の欲求、自己実現の欲求とされています。

メンタルヘルスコンディショニング講座:メインテキスト1<1章>心理学の歴史

まとめ

私たちは現在「臨床心理学」、「集団・家族心理学」、「発達心理学」、「メンタルヘルス」、「精神疾患と障害」、「プロファイリング」などさまざまな心理学に関する言葉をよく耳にしていますが、ココロの問題は古代ギリシャ時代から考えられてきました。
プラトン(前428/427-348/347)の『魂の三分説』
人間を霊魂と身体の2つに分けて考え、さらに人間のココロは、理性的な魂と名誉や欲望を求める魂、肉体的快楽を求める魂の3つの部分からなる!そして、理性は頭部(脳)、名誉や栄光を求める心情は胸(心臓)、肉体的欲望は腹部(肝臓)にあり、理性がほかの2つの魂を統御すると考えた。

そこから2,000年以上の時を経て、心理学(ココロの問題)がようやく、ヴント(1832-1920)により科学として心理学が認識されるようになります。ヴントによって提唱された実験心理学は、当時の心理学の立場を確立するだけではなく、現在における心理学の原点とも言える考え方でした。客観的な実験を通して何かを解明するという手法は、現代の科学では当たり前ともいえる方法かもしれません。ですが、心理学においては19世紀まで、実験を通してココロの働きを解明するという手法は一般的ではありませんでした。ヴントによって提唱された実験心理学の手法と理論は後に多くの研究者によって反論がなされましたが、心理学に科学的な思想を持ち込んだという点で、ヴントの功績は揺るぎないものです。また、現代の精神医学においても科学的な手法が利用されていることから、ヴントの果たした役割は大きいと言えます。

ヴント以降の心理学の発展の概略をご説明させていただきましたが、いかがでしたでしょうか?心理学発展の全体像を理解して、自身の興味ある分野を学ぶと知識が深まります。ぜひご自身でも関心あるテーマをいろいろ調べてみてください。

佐々木幹

佐々木幹メンタルヘルスコンディショナーⓇ

投稿者プロフィール

株式会社スマイルエデュケーション3代表取締役
一般社団法人ハッピーライフカウンセリング協会代表理事

大手民間スクールで約30年間スクール経営に携わり、販売マーケティングを皮切りに、商品開発室、教務室、学務室、通信教育センターの各部門責任者を歴任

現在は、自身が企画したメンタルヘルスコンディショニング通信講座の資格(メンタルヘルスコンディショナー)を取得し、「Live」「Love」「Smile」をかけ合わせた造語『LiLoveS』をコンセプトとしたハッピーライフカウンセリング協会と、学ぶすべての方の笑顔を目指すSmileCom(スマイルコム)のスクール運営を行う一方で、当サイト(メンタルヘルス情報サイト)の記事執筆を手掛けている。

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