心理学は近年、誰もが存在を知っている学問となり、専門的に学ぶ人も多くいます。昔からココロを解釈するために、宗教、哲学、思想など多方面からのアプローチが行われてきました。その中でも19世紀、科学的な手法を用いることで哲学からココロの働きに関する研究を引き離し、心理学の地位を確立させた人物がいます。「ヴィルヘルム・ヴント」というその人物は、心理学を科学的な研究対象とした功績から「心理学の父」と呼ばれるようになりました。

心理学と実験心理学

現在、心理学には様々な分野が存在しますが、世界で初めて心理学を科学的に研究したのは、ドイツの生理学者であり心理学者でもある「ヴィルヘルム・ヴント」です。ヴントは現代心理学の創始者と言われています。ヴントは心理学を哲学から切り離し、科学的な実験を行うことで、心理学を科学的な研究領域として位置付けていきました。ココロの働きを知る手法として、客観的な結果が得られる実験を用いたのはヴントが初めてでした。このことから、ヴントが創始した心理学は「実験心理学」と呼ばれました。ヴントはドイツの世界で初めて心理学実験室を開設したことで有名です。当時ヴントはライプチヒ大学で教授として哲学を教えながら、医学と生理学を学び、感覚の研究を行っていました。この感覚の研究を通して次第に、心理学や認識論に興味を持つようになり、研究を行うようになりました。この時、一定の条件下で実験を行い、実験結果を分析する、という科学的な実験方法をヴントは用いていたため、ヴントの実験手法とココロに関する理論が実験心理学と呼ばれるようになったと言われています。また、民族心理学(宗教・言語・芸術・文化などが精神に影響すると考える心理学の一分野)の体系化も行ったことから、現代心理学の創始者とするのが現在の心理学界の共通の認識となっているようです。

これまでヴントによって実験心理学が創始された過程と、ヴントの実験心理学における基本概念についてご説明しました。続いて、ヴントの実験心理学が具体的にどんなことを行なうものなのかご説明します。ヴントの実験心理学における実験とは、外的刺激を被験者に与え、外的刺激によって被験者に生じる意識経験を被験者自身に報告してもらい、分析を行うことです。外的刺激に対して示す一定の反応を自己報告するという手法は、生理学的な実験手法に似ています。ヴントの実験では外的刺激に対する意識経験を1つの心的要素として分析します。この分析から、感覚や感情が複雑に合わさったものが情緒などの情意運動であるとヴントは位置付けました。ヴントが研究対象とした範囲は、外的な刺激に影響を受けやすい感覚や感情に限定されました。記憶や思考は心的要素が結合することによって成立する、とヴントは考えました。心的要素とは意識をいくつかの要素に分解したとき、それ以上分解できない意識の最小単位のことです。心的要素は快・不快といった感覚の「単純感情」や自分が感じた感覚を他人に伝えようとする「純粋感覚」のように分解されると考えました。そしてこれらの分解された心的要素がどのように構成されているのかを調べることで意識の働きを明らかにできると考えました。このような考え方は構成主義もしくは要素主義と言われています。ヴントが提唱した構成主義的な観点は他の心理学者から批判され、そこから精神分析学やゲシュタルト心理学、機能心理学といった各学派へ展開されました。ヴントの実験心理学はその後、ライプチヒ学派が継承しました。

実験心理学の派生


ヴントの実験心理学における構成主義的な面として、「内観法によって意識を研究する」「心の要素を分析する」「意識の構成要素を重視している」という3点が挙げられます。これらの特徴を持つヴントの実験心理学に対して、フロイトは精神分析学において意識だけでなく意識化されない無意識の研究を行いました。ヴェルトハイマーはゲシュタルト心理学においてココロの働きは要素の働きや要素の集合よりも、全体的な挙動や全体の構造そのものが重要であると主張しました。またヴントが意識の構成を重視していた点に対して、ジェームズが提唱した機能心理学は意識の機能を重視するべきであると主張しました。また、アメリカにおいて、実験心理学は20世紀の前半には行動主義とも結びつき、ヴントの実験心理学で重視されていた感情や情緒への介入がなくなりました。ヨーロッパでは、思考・記憶・注意など、認知に関わるテーマを研究する実験心理学者が多かったため、認知心理学が発展していきました。

このように、ヴントが提唱した実験心理学は時を追うごとに様々な人物によって応用されていきました。並行して、科学や医学も発展していくことで、現在の心理学を確立していきました。現在では、実験心理学の成果が精神疾患の治療やメンタルヘルスのために利用されたり、応用心理学として、病院などの医療機関だけではなく警察にも利用されたりしています。

実験心理学の応用

実験心理学から発展した心理学の分野として、「実験的行動分析学」があります。スキナーは、観察対象が示す行動を、個体と環境との相互作用であると考えました。また、観察対象の行動を制御するための刺激を統制し、その個体が示す行動の予測と統制を可能としてはじめて行動分析の理論が成り立つと定義しています。これは一般的な科学用語でいうところの再現性に該当します。再現性とは、同じ条件であれば同じ結果が起きる、ということです。実験的行動分析学では、特に行動を制御するための刺激を統制する際に、客観性が重視されています。観察対象への刺激は可能な限り機械的に与えられ、実験者は観察対象へ接触しません。また、実験的行動分析学では内心の働きを考慮せず、刺激に対応する行動のみを分析します。

心理学が哲学の一部だった頃から、ココロの働きについては様々に議論されてきました。しかし、議論によって構築されたココロの働きを説明する理論はどれも主観的であり、根拠に乏しいものでした。ヴントが提唱した実験心理学によってココロの働きを説明する際に根拠が示されるようになり、現代における「科学的な心理学」の基本的な姿勢が生まれました。

例えば、ストレスを科学的に研究する手法を考えてみましょう。私たちはストレスを感じると何かしらの行動を取ることでストレス発散をしたくなります。これはストレスという不快を感じたため引き起こされる行動です。実験的行動分析学では被験者に特定のストレスを与え、被験者の行動を観察します。他の手法として脳波を測定することも考えられます。ヒトがストレスを感じている時には脳からβ波と呼ばれる脳波が発せられていることが分かっています。またこのβ波が増大するほどストレスの度合いも強いことが分かっています。脳波は電圧という物理的な数値で客観的に表現されます。つまり、脳波を測定することで客観的にストレスを感じているということが分かります。そしてこの客観的なデータから、引き起こされる行動を予測したり、異常な行動を回避したりすることができます。以上のような実験を通してヒトのココロを解明していくことは、現在でも多くの研究者によって行われています。

ヴントによって提唱された実験心理学は、当時の心理学の立場を確立するだけではなく、現在における心理学の原点とも言える考え方でした。客観的な実験を通して何かを解明するという手法は、現代の科学では当たり前とも言える方法かもしれません。ですが、心理学においては19世紀まで、実験を通してココロの働きを解明するという手法は一般的ではありませんでした。ヴントによって提唱された実験心理学の手法と理論は後に多くの研究者によって反論がなされましたが、心理学に科学的な思想を持ち込んだという点で、ヴントの功績は揺るぎないものです。また、現代の精神医学においても科学的な手法が利用されていることから、ヴントの果たした役割は大きいと言えます。





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