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統合失調症とは
- 2017/8/4
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- 4 comments
統合失調症という病気をご存知でしょうか。統合失調症というワードをネット上などで目にしたこともあるという方も多いかもしれません。統合失調症というと「話が通じない。」、「暴れる。」などのイメージを持っている方も少なくないかもしれません。
精神的な病気は、人により症状も大きく異なりますし、遺伝的なものもあれば環境により左右されるものもあります。なによりも怪我や傷などと違い見た目ではわかりにくい場合が多いので、病名などから勝手に症状がイメージされ、変な偏見を持たれることがままあるようです。統合失調症も2002年までは精神分裂病という病名でした。
『呼称変更は、全国精神障害者家族連合会が日本精神神経学会にその変更を要望したのが契機となった。1993年のことで、「精神が分裂する病気」というのはあまりに人格否定的であって本人にも告げにくい、変えて欲しいという主旨であった。』(引用元:公益社団法人 日本精神神経学会/統合失調症について»はじめに:呼称変更の経緯)
メンタルヘルスについて興味を持っていただきサイトをご覧いただいている方に向けて、統合失調症の症状や傾向の特徴についてご紹介していきます。
統合失調症とは | 陽性と陰性の違い | 原因と対策 |
統合失調症とは
統合失調症は、思考や行動・感情など様々な精神機能の統合を失ってしまう病気です。
主には幻覚や妄想、現実とのつながりの喪失といった面で障害が見られます。ただ、人によって症状の傾向や度合いがさまざまなので、一概に統合失調症にはどのような特徴が見られるか、いい切ることは難しいようです。患者数の多い病気だけに、少し個性的な人や社会におけるコミュニケーションが苦手な人などに対し、罹患(りかん)していないのに「あの人、統合失調症では?」などと素人の決めつけが職場などで起こることがありますが、統合失調症にはさまざまな症状がありますので、正しく理解して、子供や学生の間で妙な使われ方がされないように注意していく必要があります。
統合失調症という言葉がなぜ近年広く使われるようになってきているのか、それは、患者数の多さが理由のひとつとなっています。前述の通り、症状の傾向や程度はさまざまですが、軽いものを含めるとおよそ100人に1人弱がかかる頻度の高い病気となっています。つまり、身近なところで見かけたり、接したりする確率が高い病気なのです。また、感覚的な障害であるだけに、組織において浮いてしまう人を蔑む言葉として使いやすいという点も要因のひとつでしょう。とはいえ、重度の障害ともなれば、たかが悪口で済まされないほどの苦痛をも伴う病気です。安易に口にすべき言葉ではないといえるでしょう。
また、統合失調症の症状は大きく2種類に分類されます。陽性、陰性の2つです。
統合失調症の傾向が感じられる、もしくは身近にそういった人がいるようであれば、まずこの分類から注目してみてはいかがでしょうか。心の安定や解決の糸口、また症状とどう向き合うか考える上での、きっかけとなるかもしれません。
(参考サイト:厚生労働省/みんなのメンタルヘルス/統合失調症)
陽性と陰性の違い
陽性・陰性の名前の通り、これらは主に、前者が動的な症状、後者は静的症状といったニュアンスになっています。かならず明確に分かれるのではなく、統合失調症に罹患した人の経過によって表れるものなので、どちらのタイプか、というよりかはどちらのフェーズにある人間か、という点を見分けるための分類となります。いずれにおいても、統合失調症という存在を知る上で「陽性」、「陰性」という分類について理解しておいて損はありません。
・陽性症状
まず、陽性から説明します。こちらの代表的な症状には、まず「妄想」が挙げられます。健常者でも物事に対してある程度の予想、予測、想像などをおこないますが、その範疇に留まらず、明らかに間違った考え方や、客観的に見て受け入れがたいような想像を膨らませ、さらにそれを何の疑いも持たず確信してしまうといった症状です。当人は確信に至っているため、妄想するだけに留められず、それを対処するための行動すら起こしてしまうのが難点です。重症化した人ともなると、犯罪行為をも起こしてしまう場合があるほどで、ニュースなどで取りざたされることもあります。
以下、前述した厚生労働省のみんなのメンタルヘルスから「妄想」について1部引用させていただきます。
「街ですれ違う人に紛れている敵が自分を襲おうとしている」(迫害妄想)
「近所の人の咳払いは自分への警告だ」(関係妄想)
「道路を歩くと皆がチラチラと自分を見る」(注察妄想)
「警察が自分を尾行している」(追跡妄想)
などの内容が代表的で、これらを総称して被害妄想と呼びます。
時に「自分には世界を動かす力がある」といった誇大妄想を認める場合もあります。
妄想と同じく「幻覚」も陽性症状のひとつです。幻視・幻聴・幻臭・幻触といった症状に悩まされることも多いようです。統合失調症は患者の感覚に影響を及ぼします。一時的な幻覚、錯覚などであれば勘違いで済むかもしれませんが、統合失調症の場合にはさまざまな感覚を通じて、繰り返し幻覚、幻視、幻聴、幻臭、幻触が続く患者も多いようです。統合失調症では、これらのこの幻覚、幻視、幻聴、幻臭、幻触などから発展して妄想に至るケースが多いようです。
「誰かに付きまとわれていると感じる」(幻視)
「周囲に悪い噂をされていると思ってしまう」(幻聴)
「家の周りに汚物を撒かれている」(幻臭)
統合失調症が発症することで一般的な生活を送ることが困難となることも少なくありません。
また陽性の症状では「思考障害」も含まれます。思考障害では、一貫性のある会話ができなくなる、相手の反応も考えず、脈絡のない話をひたすら続けてしまうといった症状が一般的です。自分自身で何を話しているのか分からなくなることもあり、社会生活に大きく影響します。
・陰性症状
続いて、陰性の統合失調症についてご紹介します。「感情」と「意欲」の障害です。
人間は喜怒哀楽の感情を有しており、それを表情や身振り手振りで表現できる生き物です。しかし、陰性症状が発症すると極端に感情が乏しくなります。症状が軽度のうちは、周囲からはほとんど気づかれないため、治療もしないで症状を悪化させてしまう場合もあります。陰性症状が続くことで、自殺のきっかけともなりかねないところが恐ろしいところです。また陰性の統合失調症では、同時に他人の感情を察することができなくなります。周囲の状況に関心を持てなくなるケースもあります。
陰性の症状では意欲の欠如も特徴のひとつです。アクティブな感情が持てない、コミュニケーションがうまくいかないという状態に伴い、何に対してもやる気が持てなくなる状態です。趣味や恋愛、遊びなどがあればまだしも、食事や片付け、入浴などの日常生活にすら意欲を欠いてしまうこともあり、軽視できません。一人で生活することが難しくなってくるので、周囲のサポートが大事となってきます。
また、統合失調症全体における代表的な症状では思考が乏しくなる傾向があります。思考、想像力、展開力などが欠如することで、語彙が乏しくなった、比喩表現が使えなくなる、単純な作業が理解できなくなる、新しい業務が行えなくなるといった状態です。会話がスムーズにいかなくなるため、結果的に口数が減り、さらに暗い感情を増幅させてしまいがちになります。自律神経失調症では症状の進行に伴い、うつ病や自閉症など別の病気を併発することも少なくありません。
ここまで統合失調症の分類を陽性と陰性に分けて論じてきましたが、世界で活用されている医学情報源MSDマニュアルでは統合失調症の症状を次の4つに分類しています。
・陽性症状
・陰性症状
・解体症状
・認知障害
また、統合失調症と自殺の関係についても次のように論じています。
統合失調症患者の約5~6%が自殺し、約20%が自殺を試み、さらに多くの患者が自殺を真剣に考えます。自殺は統合失調症患者における若年死の主因であり、統合失調症患者の平均余命が一般の人より10年短いことの主な理由の1つです。統合失調症と物質乱用を併発した若い男性では、特にリスクが高くなります。抑うつ症状や絶望感を抱えている人、失業している人、精神病症状が現れたばかり、または病院から退院したばかりの人でもリスクは高まります。
(引用元:マニュアル家庭版/心の健康問題/統合失調症と妄想性障害)
原因と対策
さまざまな説がありますが統合失調症は生まれつき起こる、いわゆる先天性の障害であると同時に、ある程度の発症の契機があると考えられています。主には、進学や就職、独立、結婚などの人生におけるターニングポイントが発症の原因となりやすいともいわれています。人生の転機を経て、急にコミュニケーションが取りづらくなった、意欲が持てなくなったといった場合は怪しんでみるべきかもしれません。
統合失調症は理解されづらい病気ではありますが、治療法は存在します。
精神面の病気であるだけに、精神科や心療内科が主な治療の場となっています。統合失調症の治療には、心理療法のみではほとんど効果が認められず、薬物療法を中心に心理療法も取り入れると効果があることがわかっています。症状がひどい場合は、もちろん専門医のアドバイスを受けることをお勧めしますが、病院によって治療方針がさまざまですし、医師と患者の相性も重要ですので、最初に相談した病院にこだわる必要はないでしょう。症状がひどくなければ、公的機関に相談するのが1番良いと私は思います。
こころの健康相談統一ダイヤル(厚生労働省こころの耳に掲載)
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電話をかけた所在地の公的な相談機関につながります。
0570-064-556
平日 概ね9時〜16時
※対応時間は都道府県で異なります。
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当サイトにも「メンタルヘルスリンク集」に公的機関のリンク先情報をいれていますので、そちらも参考にしてください。
統合失調症は、妄想や幻覚、自閉などを特徴とする精神病です。妄想や幻覚であるにもかかわらず、強い確信を持ち行動まで起こしてしまうなど重度のケースもありますが、基本的には治る病気です。心療内科や精神科を受診する、無理せず十分な休息期間をとるなどで、改善が目指せます。およそ100人に1人弱がかかるという頻度の高い病気でもあるため、少しでも不安を感じたら公的機関の相談窓口でアドバイスを受けてみると良いでしょう。
記事 メンタルヘルスコンディショニング講座講師・佐々木幹
コメント
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罪を犯した人で統合失調症と診断される人が多いと感じていましたが、妄想や幻覚を事実だと思いこんでしまうからなんですね。もちろんすべての統合失調症の人がみんなそういう人というわけではないと思いますが。自分が統合失調症であるということ、病院に行って治療することができれば、統合失調症の人が犯罪を起こすことも減るのだろうと思いますが、自分で気づくことはなかなか難しそうな病気なので、まわりのサポートが必要だろうなと思いました。
takeさん
投稿ありがとうございます。
takeさんのおっしゃる通り、周りのサポートが非常に重要です。
ただ、(私も含めて)ほとんどの方はどのように接すれば良いのか、「サポートの仕方がわからない」というのが、現実のような気がします。本文でも少し触れましたが、症状が軽ければ「休息などリフレッシュ」する方法などをアドバイスしてあげて、少し重い症状に感じられたら「一人で悩んではダメ」と言い、公的機関への相談をアドバイスされたらすばらしいと思います。
以前ほかの記事にコメントさせていただきました。そのお返事で統合失調症のリンクが貼られていましたのでこの記事も読みにきました。
もともとは精神分裂症という名前だったのですね。もし自分がそのような名前の診断を受けたらショックを受けると思います。
統合失調症自体は聞いたことがありましたが、自分の周りにはいないので100人に1人がかかる病気だということに驚きました。もしかしたら学生のころ学年に何人かはいたかもしれないのですね。
生まれつきの障害ではあるものの治療法はあるとのことなので、少しでも違和感があればちゃんとして機関に相談することが大切だなーと感じました。
きむさん
投稿ありがとうございます。
「以前ほかの記事にコメントさせていただきました。」(感謝!) (* ̄▽ ̄)m ☆彡
実は私が中学生のころ(約50年前)、「あいつ精神分裂ちゃうか」みたいなことを訳も分からず使って、先生から叱られたことがあります。(なぜそんなに叱られるのか、その時は全く意味が分かってませんでした。)
この統合失調症、記事中にも「進学や就職、独立、結婚などの人生におけるターニングポイントが発症の原因となりやすい」と書かせていただいています。人生のターニングポイントとして、もっともストレッサー(刺激)が強い生活事件(life events)を点数付けした社会生理学者に、ホームズとレイという人がいます。彼らが示した刺激点数を簡単にご紹介させていただきます。
1位『配偶者の死亡(100)』、2位『離婚(73)』、3位『別居(65)』・・・7位『結婚(50)』
人生のターニングポイントは、何らかの形で誰にでも訪れます。メンタルヘルスの知識があれば、人生のリスクを最小化してくれると思いますし、そのような方々が増えていけば・・・と改めて思っています。