メンタルトレーナーのお仕事とは
- 2018/10/5
- 心理の資格
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近年注目を集めている職業の1つにメンタルトレーナーという職業があります。
言葉では理解できていても、具体的なメンタルトレーナーとはどのような人を指すのでしょうか?メンタルトレーナーになるにはどのような知識やスキルを身につければよいのでしょうか?ここでは、まだ知らないメンタルトレーナーというお仕事についてご紹介いたします。
メンタルトレーナーとは | 仕事内容 | やりがい | なるためには | 将来性 |
メンタルトレーナーとは
ストレス社会と言われる現代社会においては、心に問題を抱えて苦しんでいる方が数多くいらっしゃいます。
ストレスなどにより、心のバランスを崩すことで自律神経に大きな乱れが生じ、体調にもマイナスの影響を与える場合があります。実際、2013年から2015年にかけて行われたストレスと健康・全国調査(男性1,160、女性1,290、合計2,450)では、なんらかの気分障害(うつ病など)にかかっている人が7.0%(N=172)、なんらかの不安障害(パニック障害など)にかかっている人が4.2%(N=102)、なんらかの物質関連障害(アルコール乱用など)にかかっている人が15.2%(N=372)、いずれかの精神障害にかかっている日本人は22.7%(N=555)、という驚くべき結果が発表されています。(川上憲人(2015)「 精神疾患の有病率等に関する大規模疫学調査研究:世界精神保健日本調査セカンド総合研究報告書」, p38)
これからのメンタルトレーナー(ココロの指導者)はストレスに対する正確な知識が必要です。
ストレスを現代心理学用語で説明すると、「心身の適応能力に課せられる要求(デマンド:demand)と、その要求によって引き起こされる心身の緊張状態を包括的表す概念」ということになります。つまり、外部あるいは内部から、人間のココロとカラダが対応する能力に対し、突きつけられた何らかの要求と、その要求によって生じたココロとカラダの緊張した状態を全体的に表わした考え方といいかえることができます。
わかりやすく言い換えると、ストレスには悪いストレスだけでなく、良いストレスもあるということができます。たとえばスポーツでも仕事でも勉強でも何でもいいので、何か新しいことにチャレンジするときのことを考えてみてください。目標に向かって頑張っていると、必ず何度か壁にぶつかります。その壁こそが現代心理学でいうところの「ストレス」です。ストレスに陥っても、それを乗り越えた時には大きな自信につながりますし、仮に失敗しても「何が足りなかったのか」「どうすればうまくいっていたか?」と考えることによって、ストレスは自己の成長機会を与えてくれます。だから常にココロとカラダの状態を理解して、気持ちを上手くコントロールしていくことが大切です。
メンタルトレーナーとは、クライエントのココロとカラダの状態を理解することができ、さらに生理学的(時には医学的)な知識をもって、クライエントのココロとカラダのバランスを保つためのアドバイスができる人といえるでしょう。
メンタルトレーナーの仕事内容
メンタルトレーナーは、相談者が掲げた目標に導くための精神面からのサポートを行う仕事です。また、心と身体の健康に支障をきたしている人たちの悩みや苦しみ、ストレスなどをケアして、相談者の抱えている問題を解決するためのアドバイスをおこなうのも大切な仕事です。
このためには、ココロとカラダの健康の源である「自律神経」に対する知識が不可欠となります。心臓のはたらき・小腸や大腸のはたらき・血管の機能をコントロールする自律神経には、さまざまな緊張やストレスで活性化する交感神経と、精神的にも身体的にもリラックスすることで活性化する副交感神経から成り立っていますが、この交感神経と副交感神経をいかにバランスのとれた状態にして、相談者のパフォーマンスを高めてあげられるかがメンタルトレーナーの大きな仕事といえます。
スポーツ選手のサポートを行うといったイメージのあるメンタルトレーナーですが、活躍の場は幅広く、一般の企業やカウンセリング施設、医療現場などでも活躍することができます。最近ではメンタルトレーニングを人材育成のプログラムに組み込む企業もあり、活躍の場については、これからまだまだ開拓しがいのある分野となっています。
メンタルトレーナーという仕事のやりがい
人は多かれ少なかれコンプレックスや悩みを抱えて生きています。「緊張で震えてしまう」「大切な場面になると頭が真っ白になってしまう」「怒られると一言も話せなくなってしまう」など、他の人が当たり前にできることが自分にはどうしても克服できない、そんな悩みを抱えている人も少なくありません。
メンタルトレーナーの仕事はクライエントの持つ潜在能力や可能性を信じ、心理学をベースとしたアプローチ方法を検討していきます。メンタルトレーナーはクライエントにあった方法をみつけ目標に導いたり、悩みを解決したりしていくのです。メンタルトレーナーは仕事を行うなかで、クライエントの変化を最も間近で目撃することとなります。自分の知識とスキルによってクライエントがコンプレックスを克服し、自信を持つ姿に変わっていくことは、なにものにも代えがたい喜びとなります。
またメンタルトレーナーは心の健康を守る職業です。心は身体以上のケアが必要となりますが、身体ケアと比較すると、心のケアについては何をすればいいのかわからないという方も多く存在します。心の動きや仕組みについて理解することは様々な問題において重要であり、メンタルトレーナーに関連する知識はクライエントのケアを行うだけでなく自分自身のケアを行う場合にも役に立ちます。
メンタルトレーナーになるためには?
メンタルトレーナーになるためにはどうすれば良いのでしょうか。メンタルトレーナーには複数の関連する資格がありますが、代表的な資格として日本スポーツ心理学会認定の「スポーツメンタルトレーニング指導士」とハッピーライフカウンセリング協会認定の「メンタルヘルスコンディショナー® 」があります。いづれの資格も民間資格となり、現場で働くためには、資格よりも経験やスキルが重要視される傾向があります。
メンタルトレーニングを行うための専門的な知識はもちろんですが、クライエントのココロとカラダの状態の「分析の仕方」、医師の領域以外の方法での「ケア方法」など具体的に応用できるスキルについても早い段階で身につけていきましょう。メンタルトレーナーとして活躍するための知識を独学で学んでいる人ももちろんいらっしゃいますが、心理学や生理学に関する専門的な内容になりますので、大学や専門学校の心理学科や、専門のスクールや通信講座で学ぶことは効率良い手段といえるでしょう。
メンタルトレーナーの将来性
近年では、メンタルトレーニングという言葉が一般的になりつつあります。もともとメンタルトレーナーは、スポーツの分野で活用されることが多く、第一線で活躍するスポーツ選手のなかにはメンタルトレーニングを重視する選手も多く存在します。技術や体格がものをいうと考えられるスポーツの場ですが、心のパフォーマンスが試合に及ぼす影響は少なくありません。強いプレッシャーのなかで「重要な試合と考えると思うように身体が動かない」、「十分な力を発揮できない」、「練習では行うことのないミスをしてしまった」という場面をテレビで見たことのある方も多いかと思います。スポーツを行う上で今やメンタルトレーナーは欠かすことのできない存在となっています。
スポーツ選手に限らず一般の職業においてもメンタル面の強化は有効です。大切なプレゼンや商談、大勢の人の前で話すセミナーなど、プレッシャーのかかる重要なシーンにおいて、メンタルトレーナーの力を借りることは効果的です。また「環境にうまく対応できない」「過度のストレスを感じやすい」などの場合にもメンタルトレーナーの存在が有効となる場合もあり、人材のケアや福利厚生の一環としてもアピールすることが可能です。
そのほかにもトレーナーとしての特性を生かし、教育現場での活躍をアピールすることもできます。厚生労働省が平成28年に行なった国民生活基礎調査によれば、就学年齢にある12歳から19歳の若者で悩みやストレスのある人の割合は、男性で31.1%, 女性では39.9%という数字が出ています(厚生労働省(2017) 平成28年 国民生活基礎調査の概況, p21)。こうしたストレス環境にある教育の現場に、メンタルトレーニングのプロが参加することは子ども達の将来においても大きなプラスになるといえるでしょう。
メンタルトレーナーは人の心に働きかける仕事なので、今やスポーツの分野だけでなく、ビジネス、教育、芸術といった人が介在する領域であればどんな分野でも幅広く活躍する機会があるといわれています。また、新たな開拓分野として福祉の分野での活躍を目指すのはいかがでしょうか。高齢化社会が進むなかで日本では近年老人うつになる人も増加しているといわれていますが、従来の医療・介護従事者だけでは細かな問題までをサポートしきれなくなっているという現状があります。医療・介護といった分野においてもメンタルトレーナーの活躍が求められているのです。
欧米の国々と比較するとメンタルトレーナーの仕事は、日本ではまだまだ知名度も低く、決してメジャーな存在であるとはいえない状況です。とはいえ、「人」とのコミュニケーションがベースとなっているメンタルトレーナーの仕事は、今後aiやロボットが進化しても決してなくならない仕事ですし、活躍できる分野がさらに広がっていく可能性も高い仕事となりますので、将来に備えるという意味でも一度検討してみる価値はあるでしょう。
メンタルトレーナーの仕事は、認知度の高い資格がないからこそ、その人自身の心理学的知識や心身の状態を分析するスキル、人柄などによって選考されている傾向があります。ストレス社会を上手に乗り切るためにも、今後ますますメンタルヘルスへの理解と学術的な研究の場が
必要です。課題を乗り越えて目標を達成したい人を応援したい方や、苦しみを抱えた人を助けたいという思いを持った方であれば、やりがいを持って働くことができる職業でしょう。メンタルトレーナーは、人々がココロもカラダも健康に生きることができるようにするための欠かせない存在となるような気がします。
記事(初版 2017/5/4) メンタルヘルスコンディショニング講座講師・佐々木幹
コメント
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メンタルトレーナーって、記事の中で言われていた通りスポーツ選手をサポートしているイメージでした。
会社や学校、いろいろなところで活躍できそうな資格ですね。
この記事を読んで、学校には来れるけどクラスには行けないという人が行く支援学級?というところに通っている友人がいたことを思い出したのですが、そういうところにいた大人はメンタルトレーナーのような資格を持っていた人だったのかな?
もっとメンタルトレーナーの資格などが広がっていって心が健康になる人が増えればと思います。
匿名さん
投稿ありがとうございます。
メンタルトレーナーの活躍の幅は非常に多いのですが、公立の学校などへの勤務は補助業務にはつけても、メンタルトレーナーの資格だけで職につけません。
日本では医師法という法律もありますし、医師・看護師・作業療法士・公認心理師あたりの資格がないと、カウンセリング業務にはつけません。
もちろん当サイトが推薦しているメンタルヘルスコンディショナーの資格も同様で、その資格だけで心を病んでいる人のカウンセリング業務はできないのです。
ただ、健康だけどストレスを感じている人に対して、食事、運動、睡眠、各種リラクゼーションなどをアドバイスできる人が社会全体に必要とされているのは間違いありません。心理の資格は、どんな職業に就かれている方にも役立つ、強力な付加価値資格の1つだと考えていただけると幸いです。
カウンセラーは心が弱っている人や悩みのある人が相談する相手で、メンタルトレーナーはトレーナーという名前がついているだけあって、人前に出たり大事な試合があったりするときに心を強くするために助けになる人なんだということがわかりました。
わたしは少し嫌なことがあるとメンタルがやられてしまう方なので、メンタル面を強化したいと思ってます。メンタルトレーナーという職業はしりませんでしたが、気軽にメンタルトレーナーの方に相談したり鍛えてもらえるような環境があればいいのにと思いました。