日本では「閉所恐怖症」という疾患名はポピュラーでよく知られています。閉所恐怖症の症状によって、MRIなどの検査を受けられないことなどという話を聞いたことはないでしょうか。この他、閉所恐怖症に悩む人々の中には、エレベータやカプセルホテルのような狭い空間において激しいストレスを感じる、閉じ込められるような空間・環境において恐怖や不安を感じて、パニック発作を引き起こすなどという方もいるようです。

閉所に限らず、特定の動作や先端・高所など環境によるもの、特定の状況や対象に対して抱く恐怖を「限局性恐怖症」と言います。限局性恐怖症では、特定の状況・対象に対して恐怖や不安を抱くことで、パニック発作を引き起こします。閉所恐怖症は特に、狭くて逃げ場のない場所に対して極度の恐怖や緊張を感じます。閉所恐怖症に似たような疾患では、「広場恐怖症」などがあります。広場恐怖症は、古代ギリシャの集会場が広場であったという由来から来ており、人が多く密集するような逃げられない場所で、パニックを引き起こしてしまう疾患を言います。


閉ざされた空間や窮屈な場所に対して、過敏な反応を見せる恐怖症は閉所恐怖症や広場恐怖症などの他にも存在し、似通った恐怖症であると混同されがちです。しかし、中でも閉所恐怖症に特徴的なキーワードとしては「閉塞感」があります。「閉塞感」におけるパニックや緊張により引き起こされる症状を主に閉所恐怖症と呼びのです。
閉所恐怖症が進むことで、日常生活に支障をきたす場合もあります。例えば、エレベータが利用できない、バスや電車に乗ることができないなどに悩む人もいます。また、MRI検査については、検査を行わないことは重大な病気や緊急性を伴う疾患の発見が遅れてしまうことにつながる場合もあるのです。程度の大小はあるものの一説によると閉所恐怖症など恐怖症が起きる確率は人口の1割ほど存在すると言われています。特に女性における罹患率は高く約13%、男性の4%と比較し実に3倍以上あり、生涯の中で女性の方が恐怖症にかかりやすいという特徴があるようです。症状が進行することで日常生活に支障をきたす可能性もある恐怖症、中でも今回のコラムでは閉所恐怖症にスポットを当てて、ご紹介していきたいと思います。

 

閉所恐怖症の原因

恐怖症の原因は実に様々です。とはいえ、大きく大別することが可能です。恐怖症では、その原因を「恐怖体験」と「性格」に分けることができます。閉所恐怖症を発症する方の多くは、幼少期や大人になったあとに出会った恐怖体験のトラウマから症状を発症する方が多いようです。恐怖体験とはどのようなものでしょう。例えば子供の頃に押入れや物置に閉じ込められた、溺れそうになったなどの経験がトラウマとなる場合も少なくありません。閉じ込められた空間、逃げ場のない恐怖を経験すると、心の奥底にまで恐怖に対する思いが根を張って、過剰なほどまでのストレスを抱くようになってしまう可能性があります。また、大人になってからも、命の危機を感じるほどの経験をすると、それがトラウマとなり、閉所恐怖症になる場合もあるようです。スキューバーダイビング中に、酸素を供給されなくなったことで溺れかけた経験から、閉所恐怖症になるなど、原因となる恐怖体験やトラウマは人によってそれぞれ異なります。もう1つの性格は、「心配性」「神経質」といった特徴が強いほどなりやすいようです。またこれらの気質からパニック症状を引き起こしやすことから、原因と考えられます。

ではこういった原因から引き起こされる、閉所恐怖症の症状はどのようなものがあるのでしょうか。

 

閉所恐怖症の症状

閉所恐怖症の主な症状は、「パニック」です。逃げられないような狭い場所に閉じ込められることに対して、恐怖や緊張が高まってパニック症状が引き起こされます。パニック症状は、自律神経のバランスが乱れることで引き起こされるといわれています。めまいや吐き気、冷や汗、動悸、発汗、震えといった様々な症状が現れます。これらの症状が悪化すれば、過呼吸や意識消失といった症状を引き起こすこともあります。ここで具体的な事例を1つあげたいと思います。

20代男性Aさんは、健康診断のため病院を訪れていました。検査の1つに、MRI検査があり、検査室へ入り台の上に寝て検査が開始されました。しばらくしてAさんが、胸が苦しくなって動悸を訴えました。一度検査を中断しドームから検査台を出すと、Aさんは大量の汗をかいて苦しそうにしていました。医師が今までにこうした経験があるかどうか尋ねると、エレベータが苦手であったり、フルフェイスのヘルメットがかぶれなかったりといった、いくつか症状を訴えました。結果Aさんは、閉所恐怖症と診断されました。
Aさんは、今まで閉所恐怖症という自覚はありませんでした。初めての受けたMRI検査でパニック発作が引き起こされたのです。このように、症状が軽度の場合、自分自身で閉所恐怖症の発症に気づかないことケースも少なくありません。

では、閉所恐怖症と診断された場合、どのような治療が行われるのでしょうか。また、治療にはどれくらいの時間が必要でしょうか。

閉所恐怖症の治療

閉所恐怖症の治療には時間がかかります。根気強く取り組まなくてはなりません。治療方法としては、「カウンセリング」と「暴露療法」の2つのアプローチが有効とされています。カウンセリングでは、患者さんの閉所に対する恐怖の度合いや原因について探っていきます。そこから閉所に対する恐怖の認識や理解を進めていくことで、恐怖や不安への捉え方を変えていくことを目指していきます。認知修正と並行して、閉所に慣れていくことも大切です。それが暴露療法というアプローチです。暴露療法は、閉所に対して少しずつ慣らしていく方法です。閉所に対する恐怖や不安の閾値を下げていくことを目的としています。いきなり苦手な空間に飛び込むのではなく、徐々に近づいていき、達成していく。パニックに達するまでのハードルをあげていきます。暴露療法は、不安感・恐怖感が伴いますので、抗不安薬や精神安定薬の使用をしながら行うことが一般的なようです。薬物の使用にあたって当然リスクもあります。患者の中には依存症になってしまうのではないかと危惧されるかたもいらっしゃいます。信頼できる医師のもとで行うことが何よりも大切なのです。また、医療関係者以外にも、友人や家族の協力も有効です。身近な人々の支援は患者さんに安心感を与え、パニックを引き起こしにくくする効果があります。

まとめ

閉所恐怖症について、その原因や症状、治療法を紹介しました。閉所恐怖症の人口は一説によると人口の4%に影響を与えるという説もあるようです。そう考えると閉所恐怖症はかなりポピュラーな恐怖症であるといってもいいかもしれません。この記事を読んで、「もしかして自分は閉所恐怖症なのではないか」と心当たりがあった方がいらっしゃるかもしれません。閉所恐怖症を含め恐怖症の治療は一朝一夕で完治するたぐいのものではありません。とはいえ専門家に相談すること、自分が恐怖症であると認識するだけでも状況は大きく改善する場合もあります。閉所恐怖症以外にもメンタルヘルス不調の改善には正しい知識、専門家による診断が非常に重要です。

佐々木幹

佐々木幹メンタルヘルスコンディショナーⓇ

投稿者プロフィール

株式会社スマイルエデュケーション3代表取締役
一般社団法人ハッピーライフカウンセリング協会代表理事

大手民間スクールで約30年間スクール経営に携わり、販売マーケティングを皮切りに、商品開発室、教務室、学務室、通信教育センターの各部門責任者を歴任

現在は、自身が企画したメンタルヘルスコンディショニング通信講座の資格(メンタルヘルスコンディショナー)を取得し、「Live」「Love」「Smile」をかけ合わせた造語『LiLoveS』をコンセプトとしたハッピーライフカウンセリング協会と、学ぶすべての方の笑顔を目指すSmileCom(スマイルコム)のスクール運営を行う一方で、当サイト(メンタルヘルス情報サイト)の記事執筆を手掛けている。

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