今回解説するのは、妄想性障害についてです。妄想性障害とは、言葉の通り妄想が主な症状となる疾患です。妄想以外の症状は認めず、日常生活や仕事は何の支障なくこなすことができるので、周囲からは病気とは気づかれず、自分自身でも受診しようという意識が見られないというのがやっかいなポイントです。妄想性障害の診断基準としては妄想が1ヶ月以上続いていることとされています。疾患自体が周囲や自身での認識されづらい特徴もあり、中には1年以上の妄想が続いたのちに受診するといったケースも少なくありません。またこの疾患は一度発症してしまうと、一生続く場合もあるようです。なんだか怖いように感じる疾患となりますが、妄想といった症状が具体的にどのような症状であるのか、患者により大きく異なります。実際に妄想という言葉の定義を知っていても、どこまでいくと問題があり、どこまでからが妄想なのかと言う明確な判断は難しいものです。今回のコラムでは、妄想が主な症状である妄想性障害について、症状を具体的にご紹介するとともに、統合失調症や妄想性パーソナリティ障害など混同されやすい疾患との違いについてお話ししたいと思います。

 

妄想性障害の症状

妄想性障害の主な症状は妄想です。妄想とはいったいどのようなものでしょうか。定義されているものでは、その内容が通常考えづらい内容、一般的に非現実的であること、また妄想について第三者が否定した場合について修正が不可能で、思い込みの強いことがあげられます。つまり妄想とは一般的な常識から外れていてありえないことを対象者本人が信じて疑わないことを指すといえるかもしれません。ただし、一般的な常識を明確に決めるのは非常に難しい問題です。タイムトラベルができる車がある、どこにでもいける扉があるなど、現在科学では明らかにありえないことを信じ込んでいる場合には妄想として扱う必要があるでしょう。とはいえ、こういった妄想することが日常生活に支障をきたさない場合、周囲からは「少し変わっている人」と捉えられることはあっても問題がないケースもあります。またこうした妄想は1つではなく複数を同時に生じるケースも少なくありません。

妄想性障害をより的確に理解するために代表的な妄想内容をタイプ分けしてみましょう。

被愛型:実在する人物が自分に恋愛感情をもっていると思い込むタイプです。実在している人物に対して好意を持っていることから、その人に接触しようとする行動をすることもあります。よくあるケースでは、芸能人・職場の人などが妄想の対象となり、家に押しかけたり両思いと思い込んだりしてメールや手紙を書いたりすることが多いようです。現代ではこういった行動はストーカー行為といわれ訴えられることも少なくありません。とはいえ、本人としては対象者が自分に行為を持っていると思い込んでいるために改善を促すことが非常に難しいという問題があるようです。

誇大型:自分には飛び抜けた才能や能力があると思い込むタイプです。これは躁鬱病の場合にもこのような妄想があることもあります。自分は特別高貴な生まれである、大金持ちであるといった妄想がこれにあたります。中には自分を神の子であると信じる患者もいます。

嫉妬型:パートナーや恋人が不倫や浮気をしていると思い込むタイプです。ほとんど証拠がない場合でも、パートナーの些細な変化をみると浮気をしていると決めつけます。例えば髪を切ったり、おしゃれをしたり、などというだけで誤った推測をすることがあります。

相手が潔白を証明しても納得しません。特に男性の方が割合として多い傾向があり、なかには傷害事件に発展するケースもあります。

被害型:自分はだまされている、監視されている、嫌がらせをされている・毒を盛られているなどといった被害にあっていると思い込むタイプです。このタイプは自分に危害を与えられていると本気で信じこんでいることから、実際には何もしていない相手に対し、暴力をふるったり、暴言を言ったりすることがあります。また自分の正当性を主張するために裁判所等行政機関に足し訴えることもあるようです。

身体型:自分の身体に何か以上が生じていると思い込むタイプです。例えば、自分の体から悪臭がする・虫がついている・自分の顔や体は醜いのではないかという妄想をしていることが多く見られます。妄想だという認識がないため、実際に病院を受診することがあります。妄想性障害自体は、40代が多い傾向がありますが、このパターンの妄想を起こす患者には40代より若い年齢の方が多いようです。

妄想性疾患の場合、本人には病識がないことも多く、妄想について他人から否定されたり、相手にされなかったりするなど受け入れられないことについても苦しむことがあります。妄想が悪化していくことで、周囲との間に大きな溝を生じ、常にイライラしていたり、ストレスを感じたりすることも少なくありません。妄想を症状として示す疾患である妄想性障害ですが、妄想を症状として表す統合失調症や妄想性パーソナリティ障害と間違えられやすい傾向があります。

 

統合失調症との違い

統合失調症と妄想性障害は近い疾患と考えられており、同一の疾患であると認識されることもありますが、両者には2点の違いがあります。両疾患の相違点は下記です。

症状は妄想のみ

妄想性障害は妄想以外の症状がほとんど見られません。しかし、統合失調症には、妄想以外にも幻覚や幻聴をはじめ、言語障害や陰性症状として、意欲低下・喜怒哀楽が見えなくなる・自閉といった様々な症状がみられます。統合失調症の代表的な症状として妄想はあげられますが、その他にも症状がみられます。

社会機能が保たれる

妄想性障害では、妄想があることを除けば、周囲からは「変わった人である。」という認識で済まされます。先ほども少し触れましたが、妄想性疾患では妄想以外の症状は特に見られず、仕事や日常生活は通常通りにこなすことができます。しかし統合失調症は、妄想以外の症状の他に見られる症状が日常生活や仕事にも影響を及ぼすため、社会機能が低下していくことが認められます。

妄想性障害、統合失調症、よく似ている疾患となりますが、この2つの観点から両障害の違いが明確にできます。

 

妄想性パーソナリティ障害との違い

統合失調症につづいて混同されやすいのが妄想性パーソナリティ障害です。妄想性障害と妄想性パーソナリティ障害との違いはなんなのでしょうか。

 

妄想性パーソナリティ障害は、別名「妄想性人格障害」とも言われています。人格障害というワードがついていることから、パーソナリティ(人格・性格)が一般常識とは逸脱している状態です。例えば、漠然とした妄想が特徴で、世の中は信用ならない・突然攻撃されるといった観念を持っています。例えば、他人から褒められても、そのまま捉えずにバカにしていると捉えたり、もっと仕事しろと強要されていると考えたりします。妄想性障害のように、誰かに見張られている・騙されているといった被害型の妄想とよく似ていることから間違えられやすいようです。しかし妄想性パーソナリティ障害による妄想は、妄想性障害の定義するタイプにはどれも当てはまりません。また妄想性パーソナリティ障害では、性格の歪み・人格の逸脱とした特徴があります。

妄想性障害の治療

実際に自分が妄想性障害発症していることに気づいた場合、周囲がおかしいと思った場合にどのように対処すればよいでしょうか。一般的に妄想性障害の治療は困難であるとされています。その理由として、そもそも本人には自分が病気であるという自覚がなく、周囲も病気であると思っていないことから、受診が促されないことが原因のようです。また、受診した際にも、妄想に対する薬物療法の効果が薄いことから、妄想の改善は見込みにくいようです。薬物治療以外でも、カウンセリングや精神療法に関しても効果があまりないようです。主な治療方針は、薬物療法で多少の妄想症状を抑え、家族やパートナーなどが協力し、環境調整を行っていくことが多いという現状があるようです。

 

まとめ

妄想性障害は一見すると妄想以外に深刻な症状がなく、問題ない障害に思えます。実際に妄想障害を患っている場合について、本人も病識がないことも多く、周りの人間も障害に気づいていないというケースもあります。とはいえ、日々周りの人間に理解されないことは大きなストレスとなるものです。

何が疾患であるのか、どのように心のあり方を整えていくべきなのかを知ることで生きやすくなることも少なくありません。メンタル不調や疾患に立ち向かう上で正しい知識は大きな手助けになることでしょう。妄想性障害について紹介しました。

佐々木幹

佐々木幹メンタルヘルスコンディショナーⓇ

投稿者プロフィール

株式会社スマイルエデュケーション3代表取締役
一般社団法人ハッピーライフカウンセリング協会代表理事

大手民間スクールで約30年間スクール経営に携わり、販売マーケティングを皮切りに、商品開発室、教務室、学務室、通信教育センターの各部門責任者を歴任

現在は、自身が企画したメンタルヘルスコンディショニング通信講座の資格(メンタルヘルスコンディショナー)を取得し、「Live」「Love」「Smile」をかけ合わせた造語『LiLoveS』をコンセプトとしたハッピーライフカウンセリング協会と、学ぶすべての方の笑顔を目指すSmileCom(スマイルコム)のスクール運営を行う一方で、当サイト(メンタルヘルス情報サイト)の記事執筆を手掛けている。

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