人間は「身体」「精神」「魂」の3つで造られている、と言われています。
病気になる、というのはこの3つのどこかがバランスが崩れている警報だと思うのです。
「魂」はさておき、「身体」と「精神」のバランスが崩れると病気になってしまうのは自明の理だと考えられます。
病気も様々なものがありますが、がんはそのインパクトからも最大級のメッセージだと思われます。
僕は2016年9月に「肺がんステージ4」と宣告され、1年生存率は30%、治らない、延命しかできない、と医師から言われました。
その衝撃は今でも忘れません。
現在、僕の癌は奇跡的にほとんど消えていますが、僕が癌になった原因はあるのです。
原因があるから、結果があるのです。
自律神経の考察 | がんになる前の生活 | がんにならない生き方 |
僕が考える自律神経
肺がんステージ4を宣告された経験者として、自律神経(「交感神経」と「副交感神経」)について分析してみたいと思います。
身体はとても精妙な「神の贈り物」です。どこかのバランスが崩れると、全体に影響を及ぼします。そして身体はそのバランスを常に取っていくような機能も満載しています。ですので我々人間は大きな病気にもならずになんとか健康を維持しながら生活することが出来るわけです。
我々人間の健康に大きく影響のあるものとして考えられているのは「自律神経」です。「自律神経」とは心臓や内臓などの動きを自動的に整えて最適にもっていくための神経です。自分の意志で心臓の鼓動のリズムやスピードを変えるのが難しいように、それはほとんど自動運転、オートパイロットで動いています。
僕の仕事は研修講師です。研修講師になったばかりのころ、受講生の前に出る直前は心臓がドキドキと普段よりも早く・強く脈打ち、手のひらにうっすらと汗をかきました。緊張状態がこの反応を作り出したのです。研修に慣れてからはこういった反応はなくなりました。これは意思の力でコントロールしようと思っても中々難しい分野です。中には意思の力で一部出来るようになる人も存在するかもしれませんが、それはヨガや座禅などの特別なトレーニングが必要でしょう。
「自律神経」には「交感神経」と「副交感神経」のふたつがあります。「交感神経」とは主に緊張状態の時に活性化し、「副交感神経」リラックス状態の時に活性化します。この二つの神経はどちらか片方が活発化しているときはもう一方が眠ってしまうわけでは訳ではありません。両方が常に活動し、バランスを取りながら活動しているのです。ですから目の前に展開する状態によって、このふたつの神経が絶妙なバランスを取りながら自動運転をしているわけです。逆にどちらかが常に優位の状態になってしまうと、身体のバランスが崩れてしまいます。そしてその状態が長く続けば続くほど身体に負担がかかり、いずれは病気という形によって現象化してしまうのです。ですから病気とは生き方のバランスの崩れの警報でもあるのです。
「交感神経」
「交感神経」とは目の前に危険が迫ったときに活性化します。緊張し、集中し、危険を回避するための機能が発動されるのです。原始時代から人間がサバイバルのために発達させてきた重要な機能なのです。目の前に獣がいて、今まさに襲い掛かってきそうなときにリラックスすることは命の危険につながります。緊張し、手足の末端は怪我して出血しやすいので血管を吸縮して出血のリスクを減らします。ですので緊張すると手足が冷たくなるわけです。血液中の白血球バランスも変わります。ウイルスや細菌を退治する顆粒球と言われる白血球のバランスが一気に増加します。そして体内にそれら異分子が侵入するのに備えるわけです。具体的には先ほどの心臓の鼓動がありますが、他にも小腸や大腸の働きにも大きく影響します。交感神経が優位になると腸内の蠕動運動が小さくなり、消化が悪くなります。身体の全機能をサバイバルモードに切り替える、それが「交感神経」なのです。
「副交感神経」
しかし、弓を強く引きすぎているといずれは弦が切れてしまうように、常にサバイバルモードでいるとバランスが崩れ、体調がおかしくなります。緊張や戦いでダメージを負った身体を修復しなくてはなりません。それが「副交感神経」モードなのです。
「副交感神経」優位ですと心臓の鼓動はゆっくりと脈打ち、小腸や大腸もスムーズに動くために食べ物の消化もよく、便秘にもなりません。また血液中の白血球の割合も顆粒球が減り、リンパ球が増えます。リンパ球は免疫力をつかさどります。体内に発生する癌細胞などを退治するのはリンパ球の仕事なのです。つまり、リンパ球の割合が減ったままの生活をしていると、毎日5000個誕生すると言われている癌細胞に対して対応が出来ない状態になってしまうのです。こうして癌細胞が徐々に増え始め、いずれ大きな塊になって発見されてしまうのです。
また、白血球の顆粒球は寿命が短いと言われています。交感神経優位で多くの顆粒球が血液内に存在していると、多くの顆粒球はどんどん生まれては死んでいきます。そして
死ぬときに活性酸素を発生するのです。つまり、緊張状態がずっと続くと体内に多量の活性酸素を作り続けることにものなってしまうのです。これも癌の原因と考えられています。
生き残る手ために発達させてきたサバイバルモード、交感神経は、もろ刃の剣なのです。
がんになる前の僕の生活
僕は前述の通り研修講師としてほぼ毎日研修を行ってきました。毎回初対面の人たちの前で話をします。20~30人、多い時は350人以上の時もありました。受講生たちは僕をいっせいに見て思います。この人はどんな人なんだろうか? この人の話すことは役に立つのか? 講師は受講生から判断され、審判されます。慣れてきたとはいえ、緊張します。きっと僕の自律神経は「交感神経」優位になっていたことでしょう。
また、僕は研修講師の仕事が終わってからボクシングジムでトレーナーをして、プロボクサーを指導していました。担当していた選手は3人でした。プロの世界は常に「勝つ」か「負ける」かの二つに一つ。特にボクシングという競技はその明暗があまりにもはっきりしています。勝者は光り輝くリングの上で観客の歓声をあびながら勝利の雄たけびを上げ、敗者は血まみれでリングに横たわる。そんな世界です。しかも1回の敗戦が選手のボクサー人生を大きく左右します。つまり毎試合絶対に負けられないのです。これはかなりの緊張状態です。僕は選手を3人担当していましたから、1年じゅう誰かの試合が決まっている状態でした。一人終わっても、次の試合が待っている。常に試合が決まっている。常に緊張状態、サバイバルモードでした。ゆったりとリラックスなど、出来ませんでした。そもそも僕は「交感神経」優位な刺激が楽しかったのです。
しかし「楽しい」のと「健康」とは違うのです。僕の健康のバランスは徐々に崩れていきました。10年以上講師とトレーナーの二足のわらじを履き続け、僕は癌になりました。
がんにならない生き方
「がんにならない生き方」とはバランスです。交感神経と副交感神経のよいバランスを意識することです。仕事を含め、交感神経を活性化させる出来事は毎日たくさん起きます。これは現代社会に生きる我々にとって仕方のないことです。しかし、だからこそ副交感神経の修復モードを意識的に使うことが大切になります。リラックスタイムを必ず作ることです。
副交感神経を活性化させる方法はたくさんあります。一番手軽にできるのは深呼吸です。腹式呼吸と言われる方法で行うと効果的です。大切なことは呼吸しているときに身体に入ってくる空気に集中することです。鼻腔の中に流れ込んでくる空気の冷たさを感じる、そこに集中する。すると余計な雑念が消えます。そして腹に入った空気を感じる。そして吐き出すときにまた空気を感じる。この一連の深呼吸を5回するだけで大きく違います。
40度程度のお湯にゆったりと20分以上入るお風呂もお勧めです。あまり熱いと逆に交感神経が活性化してしまうのでこのくらいが適温と言われています。ぬるめのお湯に適度に入ると血液中のリンパ球があっという間に増えることも実験で分かっています。
また、自分で出来るストレッチやマッサージを受けるなど、方法はたくさんあります。
ぜひとも自分の身体をいたわって、副交感神経を活性化させて病気を予防しましょう。
コメント
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すごく興味深い記事でした。自分は普段人前に立つような仕事をしておらず、むしろ交感神経が刺激されるような生活をしてないな~と感じました。
個人的には人前に立つとすぐあがってしまう緊張しいなので、今の生活は快適だと思ってました。ですが、交感神経副交感神経のバランスの良い生活を、とのことでしたので、今よりも交換神経を刺激するような生活を心掛けてみようと思います。