青い鳥症候群とは

皆さんは、ベルギーの劇作家であるモーリス・メーテルリンクが製作した童話劇「青い鳥」をご存知でしょうか?クリスマスの前の晩、貧しい木こりの息子チルチルと妹のミチルが、魔法使いのおばあさんに「病気の娘のために、青い鳥をさがしてきておくれ。青い鳥さえあれば、あの子はしあわせになれるのだからね」と頼まれ、犬やネコのほか、光の精や水の精などのふしぎなお供をつれて、夢の中の世界へ青い鳥を探しに行くお話しです。

青い鳥症候群とは 原因 特徴 対処

青い鳥症候群とは

チルチルとミチルは、幸せをもたらすと言われている幸福の象徴「青い鳥」を探す長い旅の途中に様々な経験をして家路に着きました。結局、青い鳥を見つけ出すことはできませんでしたが、今まで家で飼っていた普通の鳩が前よりも青くなっていることに気づきました。幸福は気づかないだけで、実は最も身近なところに存在していたのだと兄妹が気付くという結末で幕を閉じます。この話には、幸福は身近に潜んでいること、そしてそれに気付けるかどうかは自分次第という教訓が込められています。この童話の教訓を元に、現実と理想とのギャップに不満を感じて極端に理想を求める若者の行動を「青い鳥症候群」と呼ぶようになりました。青い鳥症候群の人は「もっと自分に合った仕事があるのではないか」「もっと他にいい人がいるのではないか」という風に考える傾向があり、転職を繰り返したり、恋愛でもすぐに新しい恋人に乗り換えたりしてしまいます。従来、青い鳥症候群は青年期と言われる20代前半の高学歴者に多いとされてきましたが、近年では年齢の上限は30代前半まで延び、下限は高校生に及んでいるようです。今回はこの青い鳥症候群がどういった原因で引き起こされるのか、症状や対処方法などをご紹介します。

青い鳥症候群の原因

青い鳥症候群になりやすい人にはいくつかの特徴があります。青い鳥症候群になりやすい人に特徴とはどのようなものでしょうか。

「完璧主義」
青い鳥症候群の人に一番多く見られる特徴が完璧主義という性格のようです。何事についても自分の納得のいく結果を出せないことを悔やみ、常に100点を目指してしまいます。仕事や恋愛で自分の思い通りにいかないことが起こると、理想と現実のギャップに戸惑います。また、完璧主義者であるがゆえに他人にも完璧性を求めることも特徴です。

「協調性が乏しい」
冒頭でも少し触れましたが、青い鳥症候群を発症する人の多くは高学歴である、という傾向があります。学生時代、勉強だけに専念していると、学業だけが価値判断の基準になりがちです。友人や周囲と関わることが少なかった場合、考え方や意見を否定または指摘される機会が少なくなります。高学歴ゆえにプライドも高く、他人を尊重できないことにより、協調を求められる会社では人間関係を円滑に形成することができません。そして人間関係がうまくいかないことに戸惑い、自身に原因を求めて解決に動くこともせず、自分を認めてくれる他の環境があると考えはじめます。

「幸福への恐怖」
幸福への恐怖というのは大変複雑な人間の心理です。結婚前の花嫁がマリッジブルーになるというように、幸せを素直に受け止められず、今のままでいいのだろうかという不安感に襲われることで、幸せに対し疑心暗鬼になります。こういった不安や恐怖にかられ、幸せから逃避してしまうようです。

「過大評価」
自分自身のことを過大評価する傾向がある人は、自分の能力に見合った仕事ができないと感じやすく、仕事に不満を持ちやすくなります。新入社員として入社してからの仕事は、単純作業から徐々に仕事の幅が増えていくものです。しかし、自分を過大評価する傾向を持つ方は、自分の能力が無駄になっていると考えるようになりやすくなります。

青い鳥症候群を引き起こす因子をご紹介しましたが、こういった性格や特徴は、どのような行動を引き起こすのでしょうか?

青い鳥症候群の特徴

上記に示した因子が影響して、青い鳥症候群の特徴的な行動が引き起こされます。様々な行動が見られますが、理想を追い求めて現実から逃げているということが本質的な特徴です。世の中のことを安直に考えている部分があり、努力や忍耐ができないといった側面が見られます。仕事や恋愛において、うまくいかないことや思い通りにならないことはたくさんあります。そういった壁に直面したとき、思い通りにならないことが当たり前だと考えることができず、職場や交際相手に原因を転嫁してしまいます。自分のせいではないという考え方が根本的に存在しているため、職場の人間関係を長続きさせることができず、転職を繰り返したり定職につかなかったりという行動につながります。恋愛では交際相手との関係を長続きさせることができず、すぐに違う交際相手を探すといった結果につながります。また、青い鳥症候群の症状に対して自覚がないので、自分自身で改善しようという行動が起きません。完璧主義者であるため、一度現状に不満を抱けば、妥協せずに理想を追い求めます。このように、無自覚に理想ばかり追い求めていくことによって、現実とのギャップに耐えられなくなってしまい、結果的に無気力・投げやりになってしまう事例が増えているようです。自分は何をやってもダメだという風に無気力になることで目標を見いだすことができなくなり、うつ病を発症する可能性もあります。

うつ病に発展しないためにどのように対処すれば良いのでしょうか。

青い鳥症候群の対処

メンタルヘルスコンディショニング講座:メインテキスト2<2章>:ストレスと向き合う

症状が軽い場合は、何かのきっかけで治る場合あります。一般的に人間は簡単には変わることができません。一方で青い鳥症候群はうつ病などの重い精神疾患に繋がることがあります。重症化を防ぐためにも、自身に心当たりのある方や周囲に青い鳥症候群の特徴を持つ方がいらっしゃる場合は、これからお勧めする克服方法をぜひ参考にしてください。
青い鳥症候群を克服するには、自分自身を見つめ直して理想と現実の差に気付くことが大切です。まずは完璧主義や協調性の乏しさを見直しましょう。特に、他者は自分の思い通りにいかないことを自覚し、価値観を押し付けないように心がけてみてください。そして、余裕が出てきたら、他人の短所と長所の両方を探すことで完璧な人間は存在しないことを学びましょう。そうすれば、自然と自分自身の考え方も楽になり、理想ではなく現実を見ることができます。そうすることで、結果的に現状に納得でき、満足できることが増えます。また、専門機関でカウンセリングを受けることで自分を客観視できます。うまくいかないことがあって不満に思っていても、誰かに相談すれば違う考え方に気づくことができるかもしれません。また、他人の意見を聞くということを学ぶことができます。

厚生労働省の統計(新規学卒就職者の離職状況)によると、就職して3年以内に会社を辞める割合は、大卒で32%、高卒で41%、宿泊業・飲食サービス業にいたっては大卒50%、高卒64%にまで達しています。今回のコラムで紹介した青い鳥症候群が原因で辞めていく人も少なくありません。自分が思い描いていた理想通りの人生歩めないことなど当たり前だ、という気持ちを早期に持てないことは、人生においてさらなる問題になりかねません。青い鳥症候群の症状を緩和するためには、自分自身を理解する機会を増やしてみることが理想的です。誰であっても自分を見つめ直す機会はなかなか無いものですが、近年では心理カウンセラーや企業の管理部の方がメンタルヘルスに関する資格を取得し、社員のサポートを行うなど、自分を見つめ直す機会や制度については整備が進みつつあります。メンタルヘルスに関する専門的な知識を持った方が身近な存在となれば、早期に自分自身の欠点に気づくことや理想と現実の違いを理解することができるのではないでしょうか。また、職場においてマネジメントを担う方や企業の管理部門に所属している方は、メンタルヘルスに関する知識を深めることで、貴重な人材を逃さないための効果的な対策を打てるでしょう。

佐々木幹

佐々木幹メンタルヘルスコンディショナーⓇ

投稿者プロフィール

株式会社スマイルエデュケーション3代表取締役

大手民間スクールで約30年間スクール経営に携わり、販売マーケティングを皮切りに、商品開発室、教務室、学務室、通信教育センターの各部門責任者を歴任

現在は、自身が企画したメンタルヘルスコンディショニング通信講座の資格(メンタルヘルスコンディショナー)を取得し、「Live」「Love」「Smile」をかけ合わせた造語『LiLoveS』をコンセプトとしたハッピーライフカウンセリング協会と、学ぶすべての方の笑顔を目指すSmileCom(スマイルコム)のスクール運営を行う一方で、当サイト(メンタルヘルス情報サイト)の記事執筆を手掛けている。

メンタルヘルスコンディショニング講座はコチラ
https://smile-learn.com/product/

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コメント

    • ヨシキ
    • 2019年 4月 01日

    青い鳥症候群というのを聞いたことがあったけどどういうものか知らなかったので調べてここにたどり着きました。
    自分は今20代ですが、確かに友人で理想を追い続けて、それこそ自分磨きをしまくり転職を繰り返し恋人もころころ変わっている人がいます。協調性はあるので青い鳥症候群の人とは少し違うのかもしれませんが、そういう人って多いような気がしました。

    • 佐々木幹
      • 佐々木幹
      • 2019年 5月 07日

      投稿ありがとうございました。

      理想を追い求め変化を恐れずに転職するのは、たぶん称賛されるべきことだと思います。恋人探しもそうかもしれません。
      ただ、現実に働いている職場の良さや、今の恋人の良さなどをしっかりと理解しないまま、「今よりきっと良い・・・にめぐり合う。」といったあまり根拠のない思い込みで次に向かうのは、危険が潜んでいる気がします。

      話は変わりますが、世界中で起こっている紛争なども「他者は自分の思い通りにいかないことを自覚し、価値観を押し付けない」ように折衝していけば、良い方向に行くような気がします(もちろん、そんな単純ではないでしょうが・・・)。

    • (´・ω・`)
    • 2019年 7月 02日

    青い鳥症候群自体は最近知りました。自分は変化を恐れるタイプで、恋人であれば、今よりもっと良い人に出会えるかもという考えよりも次の人はもしかしたら何か問題がある人かもという考えの方が大きくなって慎重になってしまうタイプなので少しうらやましいです。
    ただ、うつ病になってしまう場合もあるというのは驚きです。自信がある人はうつ病と縁遠いものだと思ってました。

    • 佐々木幹
      • 佐々木幹
      • 2019年 7月 02日

      (´・ω・`)さん

      投稿ありがとうございます。
      私の感覚ですが、日本人は新しいことよりも変化を恐れるタイプの方の方が多いのではと思います。
      変化を嫌うタイプは、チャレンジ精神に欠けるようなネガティブな見方をされる場合もありますが、古き良き伝統を守る!ポジティブな見方ももちろんできます。ようは感じ方かと・・・
      恋人も今が一番!と考えられる人の方が、幸せになる確率が高いのでは?

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