パニック障害の症状と対処法

パニック障害という病気を知っていますか。テレビや雑誌などで有名な人などが、過去にパニック障害にかかったことがあり、それを克服したという話などを聞くこともあります。ではパニック障害になると、どんな症状が出てしまうのでしょうか。また、どのように対処していけばよいのでしょうか。パニック障害というのは、初めは自分では病気だと気づかない場合も多いようです。
しかし、パニック障害は症状がだんだん悪化してしまうと、他の病気になってしまう可能性もあるようです。症状と対処法をしっかり理解して、自分や周りの人の健康を気遣いましょう。

パニック障害とは さまざまな治療法 再発させない対処法

パニック障害とは

パニック障害の症状としては、突然の激しい動悸、息苦しさ、発汗、ふるえ、めまいがあります(参考: パニック障害・不安障害|こころの病気を知る|みんなのメンタルヘルス|厚生労働省)。それと同時に、「死ぬのではないか」というひどく不安な気持ちになります。このような症状は発作として、10分から1時間ほど起きておさまりますが、初めての場合「何の病気なのかわからない」と心配になることが多いです。病院で血液検査や心電図を診てもらっても、そのときには発作がおさまっており、異常も見られません。

メンタルヘルスコンディショニング講座:メインテキスト3<1章>:自律神経系の医学的な役割

しかし、パニック障害の場合には、このような発作が繰り返し何度も起こるため、「何でもないのか」「気のせいか」と思っていても、いつしかパニック障害であるということがわかってきます。そして、発作を繰り返すうちに、「また発作が起きるかもしれない」「発作がおきたらどうしよう」と常に不安な気持ち(予期不安)になってしまいます。やがて人が大勢いるような場所に行くと「発作を起こして、周りに迷惑をかけてしまうかもしれない」「恥ずかしい思いをしてしまう」といった恐怖感におそわれたり、以前に発作を起こした場所に行くのがトラウマになってしまったりするのです。これを「広場恐怖、外出恐怖」と言います。
世界中で最も活用されている医学情報源のMSDマニュアルには、恐怖および不安を引き起こす状況または場所の一般的な例として銀行やスーパーマーケットのレジの行列に並ぶこと、映画館や教室の中で長い列の中央に座ること、バスや飛行機などの公共交通機関を利用することなどの日常での事例が挙げられています(広場恐怖症 – MSDマニュアル プロフェッショナル版 08. 精神障害/不安症群とストレス因関連障害群)。また、広場恐怖症患者の約30~50%は,パニック障害も併発しており、パニック症を伴わない広場恐怖症は,12カ月間で約2%の女性および1%の男性が罹患。また、発症年齢のピークは20代前半であるとされています。

このような症状が続いてしまうと、人が大勢いる場所に行くのがおっくうになってしまい、引きこもりがちになってしまったり、学校や職場などに行くのが怖くなってしまったりと日常生活にも影響を及ぼしてしまう可能性がでてきてしまいます。パニック障害の原因としては、脳内の神経伝達物質との関わりがあると言われています。医療法人和楽会は、「脳の警報装置が誤作動を起こし、それに感応して神経伝達物質が必要以上に分泌されて恐怖や不安を感じてしまう」とわかりやすく説明しています(引用: パニック障害を起こす脳の働きと治療薬 | 医療法人和楽会)。ノルアドレナリンと興奮抑制作用のあるセロトニンとの調和が保たれなくなることにより、発作が起こると考えられています。しかし、まだパニック障害の原因ははっきり解明されていません。パニック障害はある日突然、自分や身の回りの人も発作が起きてしまう可能性があります。

パニック障害を治すには?

では突然パニック障害の発作が起きた場合、どうすれば良いのでしょうか。通常の病院で診察をしてもらった場合、大抵は異常なしと言われますが、決してそのままにしてはいけません。発作が繰り返されるのであれば、すでにパニック障害にかかっているかもしれないからです。

パニック障害の診察、検査には心療内科や精神科の受診が必要です。パニック障害と似ている病気に、過呼吸や甲状腺疾患があるため、病状を詳しく検査するためには問診以外にも血液検査、心電図検査、レントゲン検査も行ってもらいましょう。パニック障害の診断で使う問診は、米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアル「精神疾患の診断・統計マニュアル(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, DSM-5)」の基準によるものです。パニック障害で現れる13のチェック項目があり、その中から4つ以上当てはまった場合に、治療をしていくことになります(注:症状には個人差があるため、あくまで治療方法は医師の判断に任せるようにしましょう)

パニック障害の治療は、まず薬物療法から行われます。パニック障害は、ノルアドレナリンとセロトニンのバランスが崩れることによって起こると考えられているため、それを改善させることが治療の第一歩とされています。セロトニンを増やす働きのある薬(SSRI)が投与され、一般的に効果が感じられるまでに2、3週間かかるようです。そのため、焦らずに少しずつ対処していかなければなりません。その他、抗不安薬や抗うつ剤を使います。いずれの薬も吐き気や眠気などの副作用があるので、しっかりと診察をしてもらって、様子をみながら投与していきます。SSRIは、1週間ごとに少しずつ薬の量を増やしていき、発作が抑えられる量で内服を続けます。パニック障害の症状がおさまっていることがわかれば、また少しずつ減らしていき最終的に薬なしで生活できるようにしていきます。

続いて、心理療法を行います。心理療法は二つあり、一つは認知行動療法と呼ばれるものです。国立研究開発法人認知行動療法センターの定義では「認知療法・認知行動療法は、認知に働きかけて気持ちを楽にする精神療法(心理療法)の一種」とされています(参照:認知行動療法とは|認知行動療法センターのご案内|認知行動療法センター)。ここでいう認知とは、私たち自身の物事の受け取り方や考え方のことを指します。人は強いストレスを感じると、悲観的な考え方になり、様々な問題を実際よりも難しく捉え解決しにくい状況に陥ることがあります。認知行動療法とは、そうした偏った認知を正しい認知に戻していくための方法で、人が多い場所に行くのが怖いという人の場合、「人が多い場所に行くのは怖くないんだ」という認識に変えていけるようにします。もう一つは、自律訓練法です。自律訓練法は1932年にドイツの精神医学者J・H・シュルツが始めたもので、自らで心と体の状態をリラックスさせる方法を身に付けるものです(参照:自律訓練法とは 日本自律訓練学会)。日本自立訓練学会は、自分自身でいつでもどこでも行える方法として自律訓練法を紹介しています。発作がおきたらどうしよう、という不安や恐怖で緊張状態にあることが多い患者さんに対し、緊張をほぐしていくことが主な目的です。他にも、疲労の回復や集中力を高めるといった効果があります。

メンタルヘルスコンディショニング講座:メインテキスト2<2章>:ストレスと向き合う


パニック障害を再発させない対処法とは

 
パニック障害の治療をしていくのには、2、3年かかると言われています。医療機関での治療を受けるだけでなく、パニック障害を再発させないように自らも生活習慣を整えることが必要です。まずは栄養バランスを整えた食事を行っていきます。栄養バランスが乱れると、体の健康だけでなく、脳内のセロトニンにも影響を与えます。糖分の摂りすぎや、ジャンクフードの食べすぎは機能性低血糖症になる恐れがあります。機能性低血糖症では、食事後に血糖値が急激に上昇するため、血糖を下げるためのホルモンであるインスリンが放出しますが、インスリンは心身を興奮させ恐怖や不安感情を呼び起こすきっかけとなるため、パニック障害の誘因となるかもしれません。栄養バランスが偏らないようにしましょう。

次に、規則正しい生活です。規則正しい生活を送ることにより、心身ともに健康になれます。睡眠不足や過労、風邪、二日酔い、夏の暑さといった生活の乱れにつながるものはパニック障害を引き起こす可能性があります。また、ストレスがたまると発作を誘発しやすくなるため、軽い運動で気分転換をすることも効果的です。代表的な有酸素運動はジョギング、水泳などです。無理のない範囲で、気分転換に運動できる時間を設けると良いでしょう。ただ、疲労が溜まっていると発作を起こしやすくなるため、疲れすぎないように調整したり、睡眠を十分にとるなど対策をすることをおすすめします(参照:パニック障害って、どんな病気? | はじめよう!ヘルシーライフ | オムロン ヘルスケア )。

さらに、パニック障害の再発予防対策としては嗜好品についても注意が必要です。お酒やタバコに含まれるアルコールやニコチンは、不安を抑えてくれる作用がありますが、それは一時的なもので、すぐに反動で病状が悪化してしまいます。これまで飲酒や喫煙の習慣があった方は、急に禁酒、喫煙をするとなるとストレスになってしまうので、医師と相談してどうすべきか考えてから決めてください。コーヒーに含まれるカフェインもパニック障害を引き起こす可能性があるので、摂りすぎに注意しましょう(参照: 塩入俊樹先生に「パニック障害/パニック症」を訊く|公益社団法人 日本精神神経学会)。

以上のように、生活習慣を整えていくためには、自分だけではなかなか難しいものです。そのため家族などの身近な人にも頼り、再発させないように協力してもらうことも大切です。病気を理解してもらい、よりよい生活が送れるようにしましょう。

そして、最も重要なのが治療、投薬などを自己判断でやめないことです。治療を続けていき、生活習慣が整ってくると、「もう治ったんだ。大丈夫だ。」と感じてきます。そこで勝手に薬を減らしたり飲むのを辞めたりすると、再発をしてしまいます。せっかく長い期間治療してきたことが水の泡になってしまうので、最後までしっかりと治療を行いましょう。医師は患者さんの経過を見ながら少しずつ投薬の量を減らしながら調整をしているため、治療が終わるまではしっかりと薬を飲み続けることが大切です(参照:治療の流れ(STEP4 治療をおえるとき) | パニック障害の情報・サポートサイト こころの陽だまり| ファイザー )。

パニック障害とは、誰にでも起こりうる病気です。軽い発作だと思ってそのままにしていても、繰り返す発作はおさまりませんし、次第に悪化してしまう可能性もあります。外出するのが怖くなり、日常生活が送れなくなってしまうことで、うつ病などを併発してしまうこともあります。パニック発作かもしれないと感じたら、まずは精神科や心療科に行って、一度しっかりと検査をしてもらいましょう。
パニック障害の専門機関では、適切な治療方法を指示してもらえます。治療は長期戦になりますが、周りの人に理解をしてもらい、焦らずに少しずつ進めていきましょう。そうすれば、必ず回復することができます。

記事 メンタルヘルスコンディショニング講座講師・佐々木幹

佐々木幹

佐々木幹メンタルヘルスコンディショナーⓇ

投稿者プロフィール

株式会社スマイルエデュケーション3代表取締役
一般社団法人ハッピーライフカウンセリング協会代表理事

大手民間スクールで約30年間スクール経営に携わり、販売マーケティングを皮切りに、商品開発室、教務室、学務室、通信教育センターの各部門責任者を歴任

現在は、自身が企画したメンタルヘルスコンディショニング通信講座の資格(メンタルヘルスコンディショナー)を取得し、「Live」「Love」「Smile」をかけ合わせた造語『LiLoveS』をコンセプトとしたハッピーライフカウンセリング協会と、学ぶすべての方の笑顔を目指すSmileCom(スマイルコム)のスクール運営を行う一方で、当サイト(メンタルヘルス情報サイト)の記事執筆を手掛けている。

メンタルヘルスコンディショニング講座はコチラ
https://smile-learn.com/product/

この著者の最新の記事

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

メンタルヘルス記事一覧

おすすめ記事

  1. メンタルヘルスを語るうえで、自律神経の話は欠かすことができません。「メンタルヘルスについても自律神経…
  2. 不規則な生活
    健康なメンタルヘルスを維持するには「不規則な生活を改善し、規則正しい生活を守ることが大切である」とい…
  3. 生理になると腹痛やイライラ、経血などのあらゆる辛さが伴います。痛さや辛さなどには個人差があるので、ま…
  4. メンタルカウンセラー
    メンタルケアカウンセラーの職業とは? メンタルヘルスやストレス、心の病といった言葉をよく耳にするこ…
  5. メンタルヘルスケア
    メンタルヘルスケアについて学ぶ 近年では大きなストレスにさらされ、心の健康を損ない生活に支障をきた…
  6. メンタル心理カウンセラー
    心理カウンセラーという職業とは? 昨今テレビを中心に雑誌等のメディアやスマートフォンなどのアプリな…
  7. 臨床心理
    心理学は心の動きを学ぶ学問であり、「悩み解決の糸口を見つけたい」や「自分の心の仕組みを知りたい」、「…
ページ上部へ戻る