不眠症とは、寝つきが悪い、途中ですぐに目が覚める、朝早く目が覚める、あるいは、睡眠の質が悪く、寝足りない感じがしたり、すっきりした感じが得られなかったりする状態です。
そもそも睡眠は、食欲、性欲と並ぶ三大欲求にも数えられていることからも、その重要性がうかがえますが、睡眠は、心身の疲れを解消しストレスを翌日に引きずらないようにしてくれたり、細胞の新陳代謝を促し肌荒れを防いでくれたり、免疫力を高め高熱から解放してくれたり等々、心身の健康や美容などになくてはならないものです。
人によっては睡眠の事を、最高のセルフメンテナンスと言ったり、最高の薬と言ったりしています。

一方、寝つきが悪い、しっかり眠れないとなると、体のバランスを崩しやすいです。そしてそうした状況が一定の度合いを超えてしまうと、病気の症状として分類されることもあります。それが、不眠症です。たかが眠りとはいえ、障害のひとつにも数えられており、軽視できる問題ではありません。今回はそんな不眠症の防止や対策に役立つ情報をまとめました。不眠症は、怪我のように目に見えて分かる症状でもないので、軽く考えがちかもしれません。健康のため、そして日々の快適さを維持する上でも、不眠症についての知識を深めていきましょう。
 

不眠症ってどんな病気? 不眠症のタイプ分けを知る 不眠症が起こる原因とは

不眠症ってどんな病気?

およそ半数の人が少なくとも一度は経験している「不眠」ですが、不眠症と聞いてみなさんはどのような状況を思い浮かべますか。眠りに関するトラブルをあげていくと寝つきが悪い、眠りが浅い、まったく眠れない、もしくは悪夢を見るなども想像できますが、不眠に関する病気には重篤なものも含まれていますので、症状によってはすぐにでも医療機関に相談したほうが良いものもあります。
MSDマニュアルからいくつかピックアップしてみましょう。

『睡眠時無呼吸症候群』
睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に長い呼吸停止が繰り返し起こって眠りが妨げられる重篤な病気で、しばしば一時的に血液中の酸素レベルが低下して二酸化炭素濃度が上昇することもあります。無呼吸症候群と診断されなくても、「日中に強い眠気を催す人やいびきをかく人は、その症状について医師に相談するべきだ!」とMSDでは注意を呼び掛けており、また、「閉塞性睡眠時無呼吸症候群の患者は、飲酒や鎮静薬の服用を控える必要があり、就寝前は特に注意すべきです。」と述べています。睡眠時無呼吸症候群には、閉塞性睡眠時無呼吸症候群、中枢性睡眠時無呼吸症候群、混合型睡眠時無呼吸症候群の3つのタイプがあるようです。
※MSDマニュアル家庭版/肺と気道の病気/睡眠時無呼吸症候群より抜粋

『周期性四肢運動障害(PLMD)』
周期性四肢運動障害では、睡眠中に腕、脚またはその両方が繰り返し動きます。レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群とも呼ばれます)では、静かに座っているときや横になっているときに、脚、腕またはその両方を動かしたいという抗いがたい衝動に駆られる病気で、
通常はこれらの部位に異常な感覚も生じます。病気の原因は解明されていませんが、危険因子として「体を動かさない生活習慣」「喫煙」「肥満」を上げています。
※MSDマニュアル家庭版/脳、脊髄、末梢神経の病気/睡眠障害より抜粋

その他、不眠との関係で興味深いのが、「主要な精神障害のほとんどは、不眠症と日中の過度の眠気を伴います。うつ病患者の約80%には日中の過度の眠気と不眠症があり、不眠症患者の約40%には精神障害、通常は気分障害(抑うつや不安)があります。」という記述です。最高のセルフメンテナンスとも呼ばれる睡眠ですが、やはりココロとカラダの健康と密接な関係にあるようです。


不眠症の内容に関するタイプ分けを知る

前述では重篤な不眠症の例をMSDの中から紹介しました。一般的な意味での不眠症については、不眠症の内容におけるタイプ分けを知っておくと、自分に置き換えやすくなりますので、不眠症を分類してみたいと思います。

『入眠困難』
入眠困難というレベルはしっかり眠ることはできるものの、入眠までに時間がかかるといった症状です。具体的な時間としては、床に就いてから30分~1時間以上かかる場合です。

『中途覚醒』
次に、中途覚醒です。眠りに就けはするものの、翌朝起床するまでの間に目が覚めてしまうというものが中途覚醒となります。また一度に限らず、複数回にわたって目覚めるといったケースもこの中途覚醒に該当します。実際眠れてはいるものの眠りそれぞれの質が悪くなりやすいため、疲れやストレス解消をあまり期待できません。

『早朝覚醒』
入眠時、夜間の次にくるのが、早朝覚醒です。入眠時、就寝中はぐっすり眠れるものの、朝などの予定起床時間よりも早いタイミングで目が覚めてしまうというものです。夜はしっかり眠れても、結果的な合計睡眠時間は少なくなるため、やはり上記までと同じく十分なリフレッシュにはなりにくいです。時間の基準としては、予定起床時間の2時間以上前に目が覚める場合を指します。また一度起きてしまうとその後再度眠りたくても眠れないという特徴も伴います。

『熟眠障害』
そして最後が、熟眠障害です。入眠、夜間、起床時間といずれも正常ではあるものの、睡眠の質が悪く心身のリフレッシュが不十分といったタイプです。いわゆる、熟眠できていないという状態です。感覚的にも、睡眠時間のわりに熟睡した感じが得られないといった気分を味わう
ことでしょう。

以上、4つが主な不眠症のタイプです。どれかひとつだけでなく、複数同時に現れることもあります。的確な改善法を駆使して、快適な眠りを取り戻しましょう。


不眠症が起こる原因とは

重篤な睡眠障害は医療機関で医師の診断をしっかり受ける必要がありますが、軽度なものであれば原因を知っておくことで、改善策をみつけやすいので、良質な睡眠を取り戻せる可能性が高まります。ここでは不眠症で考えられる要因についてみていきましょう。

『環境要因』
まず、環境に関する原因です。環境に関する原因としてわかりやすい例として海外旅行による時差をあげることができるでしょう。海外へ行くと、時差に伴い日照時間の違いが感じられます。その国では当たり前の状況であっても、体はその感覚に慣れていないため適応が難しくなります。その結果、体内時計のバランスが乱れて眠りにくくなることがおきます。またその他にも、気温や騒音、明るさ、その他寝具が変わるといった環境変化などもこれに該当します。

『身体的要因』
次に、身体的要因が不眠症を引き起こすケースです。年齢や頻尿、その他病気による痛みやかゆみから寝つきが悪くなるケースです。ひとつめの年齢は、加齢による早朝覚醒が有名です。頻尿もまた高齢者に起こりやすい症状となります。

『精神的要因』
3つめは、精神的要因です。悩みを抱えている、心配事がある、緊張、睡眠への過度なこだわりなどが熟睡を妨げます。これについては、すぐ解決できない場合も多いので、不眠症の改善もまた少し難しくなることでしょう。そのため専門医に相談し、睡眠導入剤を処方してもらう、快眠効果が期待できる寝具を取り入れるといった方法などが有効です。

『生活習慣要因』
そして最後に、生活習慣が起因して不眠症を発症するケースです。お酒によるアルコール、タバコのニコチン、コーヒー等に含まれるカフェインは、不眠の原因となります。これらを摂り過ぎる、もしくは睡眠の直前に摂るなどすると、より一層症状が起こりやすくなります。量の調節やタイミングを工夫してみましょう。またその他、薬の副作用や運動不足が原因となって起こる不眠症もこのタイプに含まれます。

不眠症は、他の障害と比べそこまで重要度を感じにくいかもしれません。しかし、複数のタイプが併発するともなると、睡眠の質は極端に低下して健康を害することになります。心身の疲れの蓄積を感じたら、早めに対策を検討するべきでしょう。自分がどのタイプに当てはまるのか、また何が原因となっているのかを考えて、必要であれば専門機関に相談するなどしてみてください。

記事 メンタルヘルスコンディショニング講座講師・佐々木幹

佐々木幹

佐々木幹メンタルヘルスコンディショナーⓇ

投稿者プロフィール

株式会社スマイルエデュケーション3代表取締役

大手民間スクールで約30年間スクール経営に携わり、販売マーケティングを皮切りに、商品開発室、教務室、学務室、通信教育センターの各部門責任者を歴任

現在は、自身が企画したメンタルヘルスコンディショニング通信講座の資格(メンタルヘルスコンディショナー)を取得し、「Live」「Love」「Smile」をかけ合わせた造語『LiLoveS』をコンセプトとしたハッピーライフカウンセリング協会と、学ぶすべての方の笑顔を目指すSmileCom(スマイルコム)のスクール運営を行う一方で、当サイト(メンタルヘルス情報サイト)の記事執筆を手掛けている。

メンタルヘルスコンディショニング講座はコチラ
https://smile-learn.com/product/

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コメント

    • ねむる
    • 2019年 5月 16日

    割と自分はぐっすり眠れるタイプですが、身近な人に不眠症の人がいます。睡眠薬を処方してもらい飲んでいるようです。原因はなんだか知りませんが、薬がなくても眠れるように周りでサポートできることはあるのかな?と思いました。

    • 佐々木幹
      • 佐々木幹
      • 2019年 5月 20日

      ねむるさん

      投稿ありがとうございます。
      医師の処方による睡眠薬の服用でしたら、ねむるさんの身近な方は正しい治療をしていると思います。でも、やっぱり薬なしで安眠したいですよね。記事でも掲載させていただきましたが、不眠原因の1つ「環境要因」であればサポートできるかも?です。照明器具を変えてあげたり、深夜のスマホのやり取りを止めたり、寝る前のヨガを教えてあげたり。。。
      メンタルヘルスコンディショナーの高橋さんは、ボディスキャンすると眠りに落ちやすくなる!とマインドフルネス実践法の記事の中で言ってます。よろしければご参考にされてください。
      https://mentalhealthjoho.com/stress-mechanism/1524.html

    • ももてやん
    • 2019年 8月 20日

    自分が不眠症というイメージはなかったのですが、この記事を読んで入眠困難に自分が当てはまるのでは?と感じました。
    布団に入ってから寝ようと思っても30分以上は寝れないことが基本当たり前で、日によっては2時間くらい眠れないのですが、30分~1時間で不眠症と紹介されていることに驚きました。
    もっと寝る直前までスマホをいじっているという生活習慣が原因かなと思うので、まずは寝る前にスマホを触るのをやめてみようと思います。

    • 佐々木幹
      • 佐々木幹
      • 2019年 8月 20日

      ももてやんさん

      投稿ありがとうございます。
      「不眠症とは」というタイトルで書いた記事なので、ももてやんさんを不安にさせてしまったかもしれません。あまり気にしすぎないでください。
      『入眠困難』を逆に言うと、すぐ眠れる人は慢性的に寝不足が溜まっているということであり、日常生活でも居眠り運転などのリスクがありますが、30分・1時間たっても眠れない人は、睡眠不足がさほどではなく、日常生活のリスクが少ないとも言えます。
      寝つきをよくする方法は人によってバラバラですが、伝統的な方法はやはり日中の活動をMAXにして疲れ切ることのようです。(o^^o)

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