男女の更年期障害と自律神経の関係

最近、疲れやすい、イライラする、よく眠れない、やる気が起きないと感じた時、年齢のせいにすることはありませんか?もし、あなたが中高年でしたら更年期障害の症状かもしれません。ただ何となく気分がすぐれない、というような何気ない症状でも、その状態が長く続いたりしたときは、日常生活に支障をきたすような場合は注意が必要です。

 男女の更年期障害  更年期障害が自律神経失調症のようになるのはなぜ? 更年期障害の予防と対策

男女の更年期障害

更年期障害は女性特有の症状のように思われていますが、男性も更年期障害を発症します。男性更年期障害の病名は、2007年に専門学会で「LOH症候群(Late Onset Hypogonadism=加齢男性性腺機能低下症候群)(※1)」と採用されたそうです。以降、男性更年期障害がよくメディアで取り上げられるようになりました。
(※1)LOH症候群:「加齢に伴う変化により現れる諸症状」

更年期障害の症状は年齢と共に性ホルモンの分泌が減少することで症状が現れます。性ホルモンと自律神経の司令塔が脳の視床下部という同じ場所のため、男女共通の更年期障害の症状として自律神経失調症が現れることがあります。自律神経はストレスの刺激に弱くストレスが原因で自律神経失調症や更年期障害を発症し悪化することがあります。

女性は女性ホルモン「エストロゲン(※2)」が、男性は男性ホルモン「テストステロン(※2)」の分泌が加齢により減少することでココロやカラダに不調が現れます。ココロやカラダの不調が日常生活に支障をもらし治療を要する状態が「更年期障害」です。
(※2)本稿内の「女性ホルモン」は「エストロゲン」を指し、「男性ホルモン」は「テストステロン」を指しています。

更年期障害の発症時期は男女に違いがあり、女性は閉経前後5年の10年間(およそ45歳から55歳)が「更年期」と言われ、更年期障害の特有の症状が現れます。次第に体が慣れてくると症状は落ち着きます。一生で分泌される女性ホルモンの量はスプーン1杯といわれており最終的にはゼロになるそうです。男性は緩やかに男性ホルモンが減少して行くため、女性のようなはっきりとした期間はありません。男性更年期障害はストレスがきっかけで発症するとされ、仕事や退職など社会的要因のストレスが多い30代から60代に発症することが多く、70代でも発症する可能性があるようです。また対処しないと長期間付き合って行くことになるので注意が必要です。

性別による更年期障害の発症率は、女性が高く男性に比べて2倍といわれています。すべての女性が更年期(10年間)を迎え、更年期障害を自覚する女性は100人中、50人から60人といわれています。その中で「更年期障害」の治療を要する女性は30人くらいといわれています。
男性は、男性更年期障害が広く知られていないことや、女性特有のものという思い込みで別の病名で治療を受けている方が多いと思われます。男女共通の更年期障害の症状(※3)は、イライラ、頭痛、動悸、のぼせ、ほてり、冷え症、発汗、肩こり、息切れ、喉のつまり、疲れやすい、食欲不振、過食、手足のしびれ、睡眠障害、疲労、憂鬱などあげられます。精神面の症状が悪化するとうつ病になることがあり、自律神経失調症のような症状が現れます。
(※3)男性特有の症状は筋肉痛、肥満、ED、性欲低下など。女性特有の症状は月経不順を経て閉経へ。抜け毛、骨粗しょう症なども性ホルモンの減少に深く関係しています。

男女ともに更年期障害は問診と性ホルモンの血中濃度の検査で診断されます。女性は年齢と症状で更年期障害と自覚しやすく、軽度の更年期障害であれば食品やサプリメントで症状を緩和することができます。男性は病院で検査を受ける必要があります。気になる症状が現れたらメンズヘルスクリニックなど病院で検査するのがよいでしょう。LOH症候群と診断された場合はホルモン治療を受けることになります。更年期障害の主な治療法は、ホルモン補充治療や漢方になります。ホルモン治療は、減少している女性ホルモンのエストロゲンや男性ホルモンのテストステロンなどの作用がある薬を用いて治療する方法です。ホルモン治療は癌リスクがあり長期治療を受けることができないというデメリットがあります。男性更年期障害は、女性に比べると治療の選択肢が少なく、仕事などストレスで発症するとされていますので予防がとても大切です。女性も更年期の10年間は子育てや親の介護などストレスや悩みを抱えやすい年齢で、更年期障害が悪化しパニック障害やうつ病になることあります。男性同様ストレスには注意しましょう。

更年期障害が自律神経失調症のようになるのはなぜ?

自律神経失調症とは、緊張やストレス、運動などで活性化する交換神経とリラックスした時に活性化する副交感神経のバランスが乱れることにより生じる症状のことです。ストレスなどで交換神経が優位になりやすい状態の時、自律神経の働きが正常であれば、交感神経が優位になりすぎないように副交感神経も適度に活発になります。しかし、十分な休息を取れないなど副交感神経が活性化できず、交換神経が優位な状態が続いてしまうと自律神経失調症の症状があらわれます。更年期障害で自律神経失調症のような症状が現れる理由は、ストレスの刺激に弱い視床下部が性ホルモンと自律神経の司令塔で両者が密接に連動しあっているからです。ホルモンのバランス=自律神経のバランスという関係で、どちらかがバランスを崩すともう片方もバランスを崩すという相互関係にあります。

女性は閉経があり卵巣機能の衰えにより女性ホルモンの分泌が減ると、視床下部や下垂体では「もっとホルモンを出して」と指令を出します。指令を出されても女性ホルモンの分泌を増やすことができず、そのストレスが自律神経の働きを支配する視床下部にも影響するため自律神経のバランスを崩しやすくなります。男性は、日常のストレスがきっかけで更年期障害を発症すると言われ、仕事などで大きな社会的ストレスを感じると自律神経のバランスを崩し、ホルモンの分泌にも影響を及ぼすとされています。男性も女性もストレスに強いココロとカラダ作りが大切です。更年期障害の予防と対処として自律神経を整える生活を心がけるとよいでしょう。

更年期障害の予防と対策

女性は食事などで植物性エストロゲンを摂取し、男性は男性ホルモンを活性化するような食品を摂取しましょう。またストレスに強いコロロとカラダになることが更年期障害の予防につながります。睡眠や休息、リラックスする時間や趣味の時間を意識的に取るようにしてストレスは溜めない生活を心がけましょう。

食事でホルモンを活性化

女性は植物性エストロゲンといわれている大豆イソフラボンなどが含まれた食材(豆乳、豆腐、納豆、味噌など)を普段の食事に取り入れましょう。また骨粗しょう症の予防のために更年期後も積極的に摂取することが大切です。カルシウムのみ補充しても骨粗しょう症は予防できません。高齢女性に骨粗しょう症が多いのは女性ホルモン減少が原因です。骨からカルシウムが流れ出るのを防止している女性ホルモンが減少することにより骨がスカスカになります。女性は更年期後も骨粗しょう症防止のために大豆イソフラボンなどが含まれた食品を摂りましょう。植物性エストロゲンが含まれた食品は、大豆食品(豆乳、豆腐、納豆、味噌など)、ザクロ(ジュース)、花びらだけ、葛、白ガウクルア(プエラリアミリフィカ)などがあります。また近年、大豆イソフラボンを摂取しても体に吸収できない体質の人がいるという研究結果が発表されました。摂取した大豆イソフラボンはエクオールという物質になり、そのエクオールが女性ホルモンのエストロゲン同様の作用として働くそうです。大豆イソフラボンをエクオールに変えることができない体質の日本人は60%もいるそうです。そのような体質の女性は豆乳を飲んでも女性ホルモンの効果は期待できないので、エクオールのサプリメントで代用するとよいでしょう。

男性はテストステロンの分泌を活性化するとされる玉ねぎや山芋などを取りましょう。植物性エストロゲンのように植物性テストステロンといわれている成分が含まれる身近な食品はありません。赤ガウクルア(ソフォン)という植物は性ホルモンの原材料になる「DHEA-S」を増量される成分が含まれている珍しい植物があります。男女共に更年期障害に効果があるというエビデンスがあります(※4)。ただし、植物性エストロゲンで有名な白ガウクルア(プエラリアミリフィカ)同様、産地がタイやミャンマーで希少な植物のためサプリメントの原材料としてのみ輸入されているようです。
(※4)清光薬品工業株式会社、検査結果PDFより

食事で自律神経を整える

「血行と血流をよくする」「腸内環境を整える」食材は自律神経のバランスを改善ができます。玉ねぎは血液をサラサラにする食品ですので自律神経を整える上でも効果があると思われます。納豆など発酵食品は腸内環境をよくし自律神経の働きもサポートします。腸内環境がよいと血液に栄養が届き血液がサラサラになります。食事の始めは交換神経を高め、消化されたものが腸へ届くと副交感神経が高くなります。交感神経が高い状態は緊張している状態です。就寝前の食事はしない方がよいでしょう。またヨーグルトなど発酵食品を摂って腸内環境を整えましょう。水分を摂ることも大切です。

運動で男性ホルモンUP!そしてストレス解消を

ストレッチやウォーキング、ヨガなど体を動かし代謝を上げると血行がよくなり肩こりや冷えが解消されます。またダンスやゴルフなど楽しいと思えるとことで体を動かすとストレス解消になります。男性は大きな筋肉に刺激を与えたり、競い合うようなスポーツをすると男性ホルモンの分泌が増えると言われています。

睡眠と休息をしっかりとり更年期障害の予防

女性は食事で女性ホルモン(植物性エストロゲン)を補充していても、睡眠不足ですと有効成分の吸収を妨げます。男性ホルモンは朝に高くなり、夕方に低下するという特徴があるそうです。男性は眠っている間に男性ホルモンが分泌されるため、不眠症などで十分な睡眠がとれなくなると男性ホルモンの値が低いままになります。睡眠不足の状態が続くと不安や緊張などに反応する脳の扁桃体の活動が活発になるため、精神状態が不安定になり、ストレスが溜まりやすい状態になります。通常、睡眠や休息時は副交感神経が優位になりますが、ストレスの刺激など交換神経が優位な状況が続くと自律神経のバランスを崩してしまいます。寝むれない時やイライラしているのは交換神経が優位になっていますので副交感神経へ切り替えるためにリラックスすることが大切です。
リラックス効果がある音楽を聴いたり、アロマテラピーやマッサージなどリラックスを心がけましょう。体のほてりなど症状があるときは寝る直前の入浴と熱いお風呂は避け、入浴は就寝2時間前に済ませるとよいでしょう。また、心配事があり眠れないなど悩みを抱えている方は人に話を聞いてもらったり、心理カウンセラーなどプロに相談してみるのもよいでしょう。休む時は休み、質の良い睡眠をとるように心がけましょう。

何となく気分がすぐれない状態が続いたりしたときは、食事や運動、睡眠などに気を配ってみてください。

記事 メンタルヘルスコンディショナー・高橋晶子

高橋 晶子

高橋 晶子メンタルヘルスコンディショナー

投稿者プロフィール

株式会社COKIA代表(健康、経営、生活関連のコンサルティング事業)、マインドフルネストレーナー

19歳の時、難病を発症し生活が一変。
24時間点滴、絶食という入院生活を経験し、痛みがないこと、食事ができること、歩いて移動ができることなど日常あたりまえのことに幸せを感じ健康の有難さを実感する。

海外生活(オーストラリアとカナダ)がきっかけとなり持病が好転。
ボランティア(老人ホームや障がい者の施設)、レースクイーン、バックパッカー、ファームステイ(農業)、広告代理店、旅行会社、商社、IT、金融etcを経験し、ベンチャー企業に就職後、ペット事業で独立。

経験を含め、自分のためにインプットしてきたことが人の役に立っていることに喜びを感じる機会が増え、メンタルヘルスコンディショナーの資格を取得。
また、学生時代の心理学の授業では学ばなかったポジティブ心理学とマインドフルネスに出会いマインドフルネストレーナーとなる。
これまで以上にココロとカラダの健康にアンテナをはりアウトプットしていきたい。

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コメント

    • まっち
    • 2019年 7月 16日

    更年期障害は女性特有の症状だと思っていたので、男の人も更年期障害になるということにびっくりしました。
    また、母がちょうど更年期障害が起きやすい年齢でそのような症状が出ているので、この記事で紹介されていた食事などを勧めてみようと思います。

    • 佐々木幹
      • 佐々木幹
      • 2019年 7月 16日

      まっちさん

      投稿ありがとうございます。
      年とともにカラダもいろいろ変化していきますよね。
      ネガティブにとらえがちな変化ですが、年齢なりの楽しみ方で、人生豊かにしたいです。

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